カエルツボカビ症緊急事態宣言

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 すでにネット上の報道や,新聞やテレビ等でご存知の方も多いと思いますが,両生類(現在最も大きな被害が出ているのはカエル類)に感染し,大きな被害を もたらすカエルツボカビ症が日本国内の飼育個体において初めて確認・発表されました.私も会員になっている日本爬虫両棲類学会を含む複数の共同署名団体か ら,2007年1月12日には「カエルツボカビ症侵入緊急事態宣言」が出されました.そしてその後も,沖縄県等の日本各地で,飼育されているカエルや流通 しているカエルから感染個体が見つかっています.
http://zoo.zool.kyoto-u.ac.jp/herp/SEIMEI/tubokabi1.html

カエルツボカビと両生類のカエルツボカビ症

 両生類これまでに日本国内で見つかった感染個体はいずれもペット用,餌用として飼育されているか,流通しているカエルです.まだ野外に感染が拡大したわ けではありませんが,今後野外に拡大する恐れが非常に高いです.一般に,ツボカビ類は真菌界(キノコ,カビ,コウボ等の仲間)の一員で,腐生性ないし寄生 性の微生物で,鞭毛を持って水中を移動する能力をもつ遊走子(運動性のある胞子)が,水中の有機物や寄生相手の生物(寄主)に取り付き,そこで遊走子嚢の 状態となり内部で分裂・増殖が行われます.やがて分裂した遊走子が外に放出され,水中を移動して有機物や寄生相手の生物にたどり着き,また増殖するという サイクルを繰り返します.ツボカビ類でも種によっては,取り付いた基質上で菌糸を延ばすことがありますが,多くは菌糸の状態をとらず,鞭毛虫のような遊走 子と,遊走子嚢の状態を交互に繰り替えずタイプの世代交代を行います.
 今の所,両生類にこうした被害をもたらしているのはそのうちのカエルツボカビ(Batrachochytrium dendrobatidis)という種のみで.この種は菌糸を作らず,ケラチンという角質タンパクを好む偏性寄生性というタイプで,生きた カエル類に寄生できない場合は,死んだ両生類やその他の環境にあるケラチン(両生類以外の生きた動物に含まれるものを含む)等を含む有機物について腐生性 の増殖を行うと考えられています.淡水棲の甲殻類の外骨格(生きた淡水エビ類の外骨格での増殖が疑われていたが,現時点では否定的),水中にあるか湿った 爬虫類の脱皮殻(ケラチンを多く含む)等でも増殖する可能性があります.両生類が絶滅した環境でも,カエルツボカビは環境にあるケラチンを利用し,増殖・ 生存を続けますが,その仕組みや増殖・生存場所については現時点で確認されていません.もし,生きた両生類のケラチンを含む組織のみでしか増殖できないの なら,「休眠胞子」のような状態の知られていないカエルツボカビは,両生類がいなくなった環境では死滅するはずだが,そのような現象は起こっていないよう です.
 このカエルツボカビが両生類の皮膚に感染した場合,非常に致死性が高く(90%以上とされる),この感染症の流行により,世界各地で多数のカエル(無 尾)類の絶滅や急激な個体数減少をもたらしています.この種の感染症によるカエル類の絶滅の多くは種レベルではなく,地域個体群レベルですが,一部のカエ ルはこの病気が主な原因で種自体が絶滅した可能性が高いとされています.特に,中米とオーストラリアで被害が深刻で,北米,南米,アフリカ,ヨーロッパで も感染が確認されています.アジアでのカエルツボカビ症の確認は,今回の日本での例が最初ですが,未確認ではあるもののタイ等でもこのカエルツボカビ症ら しきカエルが見つかったという情報もあります.

感染の仕組みとその拡大

 今の所,現在この種のツボカビは和名「カエルツボカビ」と呼ばれており.最も被害が大きいのがカエル(無尾)目ですが,有尾目でもプレソドン科やアメリ カオオサンショウウオ(ヘルベンダー)属でも発症例があります.また,シリケンイモリでも感染個体が見つかったという情報もあり,イモリ科でも発症する可 能性があります(サンショウウオ科での感染例,発症例は報告がないが,その危険性はあります).日本国内には分布しないアシナシイモリ(無足)目やサイレ ン(堅口)目(ないし亜目)につ いては感染の有無について情報がありません.種によってはこのツボカビに感染しても症状が出ないか,抵抗力があるので,症状が出ないことも有りますが,多 くの種では感染すると下記のサイト等に紹介されているような症状が出ることが多いとされています.しかし,確実な診断には,感染症の原因となる菌そのもの を組織検査または遺伝子検査することが必要です.なお,こうした症状は感染直後に出るものではないので,新規導入個体等では少なくとも2ヶ月程度の検疫期 間を設け,その間は既に飼育している個体と器具を共用したり,一緒に飼ったりしないことが重要です.検疫中の個体の廃水を捨てる場合には消毒が必要です.
 このカエルツボカビ症は,両生類から他の両生類に水を介して感染しますが,魚類,爬虫類,鳥類,ヒトを含む哺乳類には感染しません.ヌマエビ科のテナガ エビ属(Macrobrachium spp.),ヌマエビ(Caridina zebra)等,淡水性のエビ類の少なくとも一部には感染 するが,発症しないとされていましたが,最近の報告ではこれらのエビ類での感染は元の論文の発表者らにより否定されました.しかし,それらの飼育水や体に 付着して運搬され,感染が拡大する可能性もあります.また,感染した両生類を餌として与えていた爬虫類が飼育されていた水や床材から感染が起こる可能性も あります.感染した両生類の飼育個体(死体を含む)が両生類の生息地に捨てられる,胞子(遊走子)を含む排水が野外に流出する,飼育者が両生類生息地へ靴 等に胞子をつけた状態で行く等で,今後感染が起 こり,悲惨な結果を招くことが容易に予想されます.
 進行してしまうと治療は難しいですが,初期であれば効果の報告されている治療法があります(急性の場合は確実ではない),いったん野外に拡散したら駆除 はできません(両生類の生息地に胞子が広まった場合その選択的な回収や駆除は事実上不可能).さらに,その地域に人が出入りすることや,水流によって遊走 子が移動することで,他の地域に感染拡大する可能性があります.これまでの海外の発生例では,何年経っても自然収束せず拡大を続けるのみで,その間複数の 種の絶滅が引き起こされています.
 このカエルツボカビの遊走子は鞭毛を持って動き回り,カエル類の皮膚のケラチンの部分に寄生します.そこで遊走子嚢を作って単為生殖によって殖えるので すが,その過程で両生類の皮膚に異常を生じさせます.オタマジャクシの場合.歯のケラチンを含む部分に感染が起こり,あごの形態に異常を生じさせます.こ のツボカビの遊走子は高温に弱く,遊走子の状態では28度程度で活動しなくなり,30--32度で死滅するとされていますが,これは実験下の水中にいる遊 走子や培養実験下でのデータです.その為,遊走子嚢内にある状態,皮膚に寄生している状態,あるいは環境次第ではこの温度では死滅しない可能性が高く, 30度を多少超える程度の温度処理により死滅する保証はありません.また,これは夏場に気温が30度を超えることの多い日本の低地でも,条件次第では死滅 しない可能性があるということでもあります.そもそも野外の水場で水温が30度を超えていても,地下水の湧水地点周辺等では遊走子は充分生存可能な温度か もしれません.30余度でしばらく高温飼育すればツボカビは死亡するので大丈夫とか,ある場所の気温,水温が30度を超えているからと死体や生体を捨てた り,未処理の水を流したりしても問題ないとか,夏場に気温・水温とも30度を超える日本の低地では広まるはずがないといったふうに安易に考えるのは禁物で す.

日本の両生類への影響

 カエルは野生状態では全体としての個体数がかなり多く,昆虫類等,小型無脊椎動物の重要な捕食者であると同時に,幼生のオタマジャクシも含め,様々な捕 食性動物の重要な食物となっています.カエル類の激減や絶滅は,こうした関係の深い動物にも影響を与えることで,環境に重大な変化をもたらします.また, 有尾類は 隠蔽的な種が多いものの,野外では環境によってはかなり高密度に生息する場合もあり,食性の幅が広く,幼生から成体まで一貫して動物食なので,その減少が 被捕食者である小動物に大きな影響を与える恐れがあります.
 両生類の絶滅や激減は,被捕食者の一時的な爆発的増加や捕食者の絶滅につながる可能性もあります(当然カメ類も影響を受けるでしょう).また,農業害虫 等の被害の拡大や,病気を媒介する昆虫の急増による流行病等によって,人の活動にも重大な影響が出ることもあり得ます.また,日本の領土内には非常に多数 の無尾類(カエル類),有尾類(イモリ,サンショウウオ,オオサンショウウオ)が分布しており,その多くが日本国内の固有種,固有亜種です.この病気が日 本の自然環境で拡大すれば,多数の日本産の両生類が種レベル,亜種レベルで絶滅する可能性すら有ります.

 野外でのカエルツボカビ症の発見については,下記のカエル探偵団による「カエルツボカビ症発見マニュアル」(暫定版/PDF形式)が参考になります.
http://www.wwf.or.jp/activity/wildlife/biodiv/alien/chyt2007/report/20070120wksp52.pdf
 カエルツボカビ症による大量死の可能性のあるカエルの死体を発見した場合は,速やかに関係機関(環境省や自然環境事務所等環境省の出先機関,上記等に名 称のあるツボカビに関する研究機関等)に連絡すること,その場からカエルツボカビをよそに持ち出さないことが特に重要です.大量死を発見した場合,大勢の 人を呼ぶ,カエルの死体をいじり回す,死体の周辺で動き回る,靴や衣服,その他の器具等を消毒せずに他の両生類の生息地に移動する,発生場所周辺の水や土 を運ぶ(意図的であれ,非意図的であれ)といった行動は感染の拡大につながります.海外では,ある場所でカエルツボカビ症による大量死亡を確認した人が, その後,離れた他のカエル生息地でも同様の現象が起きていないか確認しに行った結果,カエルツボカビを運んでしまい,感染が拡大したとされる例がありま す.カエルツボカビの遊走子がいる可能性のある,水,土,死体に接触せず,接触した場合は下記の薬品類で消毒を行って,その場からカエルツボカビを持ち出 さないよう細心の注意を払い,速やかに連絡しましょう.

ツボカビ症についての情報源

 この件に関する詳細な情報(ツボカビ対策解説書、Q&A等)は下記のウェブサイトや文献に掲載されています.また,この文章もそれらや,そこで取り上げ られている文献を情報源として作成しています.

両生類のツボカビ症に関するWWFジャパンのサイト
http://www.wwf.or.jp/activity/wildlife/biodiv/alien/chyt2007/index.htm

上記中のツボカビに関するQ &A
http://www.wwf.or.jp/activity/wildlife/biodiv/alien/chyt2007/q-a20070113.htm#q6

上記中のカエルツボカビ症緊急対策行動計画に関する記事
http://www.wwf.or.jp/activity/wildlife/news/2007/20070209.htm
緊急対策行動計画最終報告書全文(PDF形式)
http://www.wwf.or.jp/activity/wildlife/biodiv/alien/chyt2007/report/20070120wksp.pdf

爬虫類と両生類の 臨床と病理のための研究会作成の「ツボカビ症に関する解説書」
要約版
http://www.wwf.or.jp/activity/wildlife/biodiv/alien/chyt2007/report/20070120wksp11.pdf
詳解版
http://www.wwf.or.jp/activity/wildlife/biodiv/alien/chyt2007/report/20070120wksp12.pdf

同「ツボカビに関するQ & A 一般のカエル飼育者の方々に 」
http://www.azabu-u.ac.jp/wnew/detail07/pdf/070111_2.pdf
これらはWordの書類としても下記からダウンロードできます.
http://www.vm.a.u-tokyo.ac.jp/byouri/JSVPJCVP/tsubokabi-f/tsubokabi.html

 また,All About の爬虫類・両生類のガイドサイト(ガイドは星野 一三雄氏)にも星野氏のわかり易い「緊急記事・カエルツボカビ症」が掲載されています.
http://allabout.co.jp/pet/reptiles/closeup/CU20070112A/
 星野氏による書きの追加記事「ツボカビ症対策 前・中・後編」も紹介されています.
http://allabout.co.jp/pet/reptiles/closeup/CU20070129A/
http://allabout.co.jp/pet/reptiles/closeup/CU20070210A/
http://allabout.co.jp/pet/reptiles/closeup/CU20070211B/

 爬虫両生類関係では「ビバリウムガイド(マリン企画刊)」の 36号のp.103に,冨水明氏による「CAUTION:ツボカビ撃退マニュアル」が掲載されています.また,クリーパー36号(p. 76; p. 112--121)にも,田向健一氏による「緊急寄稿:カエルツボカビ症」が,37号には黒木俊郎氏,宇根有美氏による「カエルツボカビへの対処」が掲載 されています.他の爬虫両生類や熱帯魚の飼育雑誌にもカエルツボカビ症に関する記事が掲載されています.

 クリーパー社のウェブサイトは下記の通りです.最新号及びバックナンバーはこちらからも購入できます.
http://www.bekkoame.ne.jp/ha/creeper/

飼育者がすべきこと

 この件については残念ながら,例によってマスコミが一般の恐怖感をあおるような報道が先行しており,爬虫両生類の飼育者であっても,この件に関しては情 報不足で混乱している方は少なくないように思えます.今後追加情報は出ると思いますが,上記のサイト,雑誌に一通り目を通せば,現時点で出回っている情報 の多くが入手できるはずです.
 上記のサイト等を参考にした,取り敢えず自分で行っている対処法と,人に聞かれた時に勧めている対処法を書いておきます.筆者がこの1,2年飼育した両 生類はイベリアトゲイモリ,チョウセンスズガエル,メキシコサラマンダー(アホロートル)の3種です.いずれも国内CBで,この病気の症状は出ていませ ん.また,筆者の調べた限りこれら3種(およびこれらを含む3科)でのカエルツボカビ感染例は見つかりませんでした(アフリカやヨーロッパ産のスズガエル 科では感染例があるかもしれません).それでも,感染拡大防止のため下記のような方法を実践しています.この病気は一部の種の両生類では,感染が起こって も抵抗力があって,ほとんど症状が出ないこともあり,そういう保菌しているが症状が出ないか,出にくい種,(アフリカツメガエルやウシガエル)によって, 世界中に拡散した可能性があります.
 まず一番よいのは,新規個体特に外国産の個体を導入しないことです.が,そうはいかない人もいるでしょう.新規導入個体は最低でも60日以上の隔離と検 疫を行い異常があればすぐに獣医に相談すべきです.本来,爬虫両生類の飼育では,異種間特に産地の異なる種同士の同居は避けるのが賢明です.検疫の間, ホースやネット等の器具,飼育水等を他の容器で買われている飼育個体と共用できません.また,新規導入がなくても,飼育者本人や家族,他の動物やその飼育 水等に付着してカエルツボカビが運ばれる可能性もあります.
 既に飼育している個体については,2ヶ月以上の長期に渡って他の両生類と接触(人の手,ネットやピンセット,餌や洗浄容器等を介した間接的な接触を含 む)がない個体であれば,カエルツボカビの感染している可能性は低いですが,基本的に原因不明の死亡や体調不良,上記の診断法にあるのと類似した症状が見 られる等,少しでも感染の疑いがある場合は,早急に下記の要領で検査に出すのが賢明です.

カエルツボカビ症 検査手順マニュアル(上記のWWFのサイトより)
 カエルツボカビ症を診断・検査については麻布大学病理学研究室,および国立環境研究所作成の下記のマニュアルがあります(PDF形式).

カエルなどの飼育者・愛好家の方向け
http://www.wwf.or.jp/activity/wildlife/biodiv/alien/chyt2007/report/20070120wksp44.pdf
獣医師の方向け:個体サンプルの取扱い
http://www.wwf.or.jp/activity/wildlife/biodiv/alien/chyt2007/report/20070120wksp43.pdf

 上記等での発表で,治療法が確立されていないという記述もあるとはいえ,ある程度効果の見込める治療法は判明していますので,疑いのある場合は獣医に相 談しましょう.ただ,それで100%直るものではないし,特に急性の場合は発症後数日で死亡することもある為,間に合わないケースも多くなります.また, 進行してからの治療は非常に難しいようです.個体が死亡している場合は死体を保管した状態での連絡が望ましいです(死体の管理については上記の Q&A 参照).紹介したサイト等でこの病気に詳しいコア獣医師の名前もあげられ,連絡先も書かれています.また,相談相手が一般の獣医でこの病気や両生類につい て専門外であっても,最低限他のどの獣医に相談すればいいかはわかるはずです.

簡単な消毒法

 以下は筆者が行っている,あくまで両生類飼育者がツボカビを外に撒かないため予防法,消毒法です.また,カエル類を餌として利用している場合は,その飼 育水の処理もこれに準じます.他の飼育者の方の参考になれば幸いです.
 検疫中あるいは飼育中の飼育水,床材は,水温50度で遊走子(胞子)の殺菌が可能なものの(50度のお湯をかけるのでなく,水温を50度以上にする), 胞子 嚢内にある状態等では効果がはっきりしないので,家庭用の流し用塩素漂白剤を併用する方法を行います.排水をバケツにまとめ.熱湯を加え50度以上にした 状態で,説明書きにある使用量より高濃度に塩素系漂白剤を加え30分以上放置します(終了時点で水温が50度あることが望ましい).残餌や糞等有機物の量 が多ければその分濃度を上げる必要があります.その後,ハイポを放り込んで塩素を中和してから,大量の水道水とともに下水に流します.使用したバケツ等は 下記の逆性石鹸で消毒します.熱に強い製 品や器具については,高温のスチームを出すスチームクリーナー等も使用できます.なお,塩素系漂白剤の使用時には換気に注意して下さい.酸性物質を足すと 塩素ガス が発生し非常に危険です.
 現状では,生きた植物(水草を含む)を殺さずに消毒するのは難しいです.これらは感染したケージ内にあったものについては,焼却処分をするくらいしか方 法がありません.それらの植物や,感染個体またはその疑いがある個体を飼っていたケージや飼育器具を外において雨ざらしにするのも,周囲の環境にカエルツ ボカビをばらまくことになりかねません.
 餌等に使用するカエル類については,生体でなく冷凍であればカエルツボカビが殺せるのではという質問を受けましたが,冷凍による殺菌は無理なようです. また,その餌用のカエルが感染している場合には,熱湯で茹でる等の処置を行わない限り,完全な殺菌は行えません.また,ヘビ類などの爬虫類に餌としてカエ ル類を与えている場合,カエルがカエルツボカビ症に感染していても,爬虫類への感染はないとされていますが,ぬれた脱皮殻がある場合には,そこでカ エルツボカビが生存,増殖する可能性があります.爬虫類の皮膚はケラチンを多く含んでいます.脱皮殻は焼却処分するか,カエルの死体同様,密閉した状態で ゴミとして処理します.
 人の手指の消毒は速乾性の手指消毒剤ヒビスコールS(グルコン酸クロルヘキシジンをエタノールに溶かしたもの)を,ケージ自体や器具類(ホースやサイ フォン用のポンプ)の消毒には,逆性石鹸(オスバンやザルコニン)を使用しています.これらは大きな薬局等で入手できると思いますし,家庭用として充分な 量なら,両方併せても2千円程度で購入できます.他にビルコンS,塩素系(製品によっては)の漂白剤も使用できます.生ゴミとして捨てる前の死体自体の消 毒にこれらは 使用できると思いますが.死体の完全な消毒を確認するのは難しいので,消毒したからといって野外に埋めたり,捨てたり,下水に流したりは絶対にやめましょ う.
 飼育個体を捨てない,逃がさない,逃げられないはツボカビ症以前に飼育者の義務です.死体を自分の家の庭や植木鉢等を含め,地面に埋めたり,野外に捨て たり,下水に流してもいけません.密閉または消毒してからでも不可です,死亡個体は病理検査に出すか,ホルマリン等で固定し標本にするのでなければ(この 過程でツボカビも死にます),焼却するか,ビニール袋等に密閉して雨水等で死体からツボカビが周辺環境に流失しないようにして生ゴミに出します.この際, 死体を上記の消毒剤等で消毒すれば,死体からの万一の感染リスクを減じることが可能です(ゼロにはできません).さらに,両生類を逃亡できるような開放的 な環境で飼育しない,一 時的に野外から持ち帰った個体を再放逐しない等も重要です.本来,持ち帰った野生動物は最後まで飼育する義務があると考えて下さい.また,保菌する両生類 が身近にいる可能性のある方は,野外のカエルが生息する環境での活動を,毎回徹底的な消毒が行えるのでなければ停止することが,感染拡大防止のために必要 です.

最後に

 このサイトの閲覧者はカメの飼育者が中心と思いますが,その中にはカエル類も飼育している方がいるでしょう.また,これから飼育するつもりの方もいると 思います.また,本人が飼っていなくても,家族や親戚,友人,知人等に両生類を飼育している方がいるという方がいるかもしれません.そうした方にも注意を 呼びかけ,野外に拡散しない為の対策を実行していただきたいと思います.なお,内容の重要性を考え,このページのリンクはフリーとします.リンクでなく内 容の一部ないし全文を引用する場合には,出典(最低限このサイトのURLと著者名)の明記を御願いします.
 このウェブページの作成,公開に関しては,「かめのゆめ」管理人代理,たっく氏に全面的に協力頂きました.また,田園調布動物病院の田向健一先生および ク リーパー編集長の宇田川元雄氏には,クリーパー36号掲載の記事に関して出版前に情報提供を受けました.また,神奈川県衛生研究所の黒木俊郎先生,麻布大 学の宇根有美先生は,記述した内容に関し筆者の質問に御答えくださり,文献の入手にもお世話になりました.以上の方に心より感謝いたします.


2007.02.06. 作成
2007.03.22. 加筆
2007.05.18. 再加筆

安川雄一郎 博士(理学)
高田爬虫類研究所沖縄分室研究員
カメネットワークジャパン理事
爬虫・両生類情報誌「クリーパー」編集委員

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