茶林杯1000字小説コンテストのページへようこそ。
茶林杯1000字小説コンテストは、私のメインサイトである馬車馬堂の100000ヒットを記念して企画されたコンテストです。
2月1日から29日までの期間で作品を募集し、3月1日から10日の期間で作品の公開・作品投票を行いました。
作品投票にて投票された票数と主催者である私によるランキングポイントを合計して、そのポイントで順位を決定いたしました。
■ 1000字小説グランプリ ■
『魔獣は火でなく愚痴を吐く』
【作者】井上斑猫 さん
【獲得ポイント】21pt
作品を読む ウェブサイトへ行く 茶林感想
なにが嫌だって、中途半端な設定が一番嫌なんだよ。「魔獣」って「魔」がついてるだろ?だったらもう思いっきり神秘的な生き物で、霞食って生きてて肉体も無くて、たまーに人間の前に現れるからその名前が記録されてる、とかいう設定にしてくれればいいのにさ。俺やられ役だからそれは駄目だって。家畜攫うとか馬車襲うとか、退治するのにふさわしくないといけないんだって。剣で死ななきゃいけないんだって。やってられないよ。
■ 1000字小説銀賞 ■
『すべては愛のしわざ』
【作者】ウェリス さん
【獲得ポイント】17pt
作品を読む ウェブサイトへ行く 茶林感想
さあ、逮捕して。私、さっき人を殺したの。死体はホテルにあるわ。出来ればここまで運んできたかったけれども、どうにも重くてね。仕方なく置いてきたの。場所は駅前のエルホテルよ。寝室にあるからよろしくね。
動機は「すべては愛のしわざ」といったところかしら。貴方たちはよく「痴情のもつれ」なんて品の無い表現を使うけれども。要するに、彼が私以外の女と仲良くするのが嫌だったのよ。彼は私のもの、そして私は彼のものなんだから。
■ 1000字小説銅賞 ■
『意思の尊重』
【作者】GOOFY さん
【獲得ポイント】17pt
作品を読む ウェブサイトへ行く 茶林感想
潔は広くなってしまった我が家に淋しさを感じていた。
妻を4年前に見取り、そして3人の子供達ももう心配する事なく、それぞれが自立し安定した家庭を築いていた。
しかし遠方にいる為、ほとんど顔を合わせる事もなくなってしまっていた。
そんなある日、新聞の片隅に「故人の意思を尊重した葬儀を行ないます。」と書かれた広告を見つけた。
■ 1000字小説茶林特別賞 ■
『名も無き兵士の詩』
【作者】亜戸 乱駄夢 さん
【獲得ポイント】14pt
作品を読む ウェブサイトへ行く 茶林感想
次第に遠ざかっていく爆撃音を、僕は地面に横たわって聞いていた。
巻き上がっていた土煙もだいぶ薄れてきたが、周囲に動くものの気配は、無い。
辺りには、油と火薬、そして肉の焦げる嫌な臭いが立ち込めていた。
「全滅、か・・・」
もうすぐ、日も暮れる。
荒涼たる景色を見つめながら、僕は、故郷の美しい夕焼けを思い出していた ―。
おめでとうございます!
■講評
総投票数137票。それらの票数と主催者である私によるランキングポイントを合計し、順位を弾き出したところ以下のような結果となりました。
21pt:魔獣は火でなく愚痴を吐く
17pt:意思の尊重 すべては愛のしわざ
14pt:名も無き兵士の詩 細切れのラブストーリー
13pt:傘 料理上手 感染
11pt:古代博物館 影
10pt:薔薇の小部屋
9pt:戦の庭を歩むものあり 思い出の耳
8pt:日常 色 虹になりたい
7pt:ある日、アフターヌーンティーなんて洒落てみた時の話
5pt:街角にて
4pt:ホワイトバレンタインデー
3pt:微笑み
二番手以下を大きく引き離し、21ptを獲得した『魔獣は火でなく愚痴を吐く』を本コンテストのグランプリと決定いたしました。
二番手の17ptには『意思の尊重』『すべては愛のしわざ』が同数で並びました。同数の場合には読者投票数で勝る側を上位としようと思っていたのですが、読者投票数も同数。よって、1000字という制限をより有効に活かしていると判断した『すべては愛のしわざ』を銀賞、『意思の尊重』を銅賞と決定いたしました。
また、惜しくも上位には食い込みませんでしたが、私がもっとも気に入り、押したいと思った一編『名も無き兵士の詩』には茶林特別賞を進呈いたします。
全体として、恋愛がらみの作品が多かったように感じます。これは私の運営するウェブサイトの傾向から考えるとちょっぴり驚きで、また面白い事態でもありました。また、恋愛という同じモチーフを用いてあってもそれぞれの切り取り方は個性的、魅力的なものでした。
『ホワイトバレンタインデー』はデートに向かう前の1シーンを切り取り、詩的に綴った作品。『料理上手』は秘めた恋に揺れる主人公の心情を、情景描写から浮かび上がらせています。まさに料理上手。
『日常』は愛情のマイナス要素と我々の外部認識の不安定さをストレートに綴り、『ある日、アフターヌーンティーなんて洒落てみた時の話』はノロケを聞かされる人間のやるせなさを面白く描いています。
『すべては愛のしわざ』も『日常』と同系統の作品といえるでしょう。ですがこちらは設定や構成面でまた違った面白さを見せてくれました。『影』はとても純粋な、原初的な愛をやさしく綴っています。
『色』『薔薇の小部屋』はちょっぴり偏執的な愛を描いた怪作。『細切れのラブストーリー』は恋愛話と郷愁を見事に融合させた良品でした。
『微笑み』は本コンテスト中、もっとも恋愛小説らしい恋愛小説でした。
これら恋愛がらみの作品が多い中、様々な形で健闘してくれた作品もあります。
『傘』は不思議な雰囲気のする一品でした。読んだあとに心があたたかくなるような、そんな作品です。
『感染』は本コンテストで一二を争う問題作でしょう。時事ネタや内輪ネタを上手く用いた本作品は、お祭りという雰囲気にもっとも近いものでしょう。
そして『感染』と争う問題作といえるのが『古代博物館』。まさか本当にこういう作品が送られてくるとは思っていなかったので驚きでした。ある意味私の作風に一番近いかもしれない。
『意思の尊重』はテーマ性の強い作品です。1000字小説としては厳しかったかな、という思いもありますが、本コンテストのエッセンスとして際立っていました。
『魔獣は火でなく愚痴を吐く』はファンタジー世界における魔獣の愚痴を綴ったもの。その軽妙なテンポとセンスが多くの読者の心を捕まえました。『戦の庭を歩むものあり』とあわせて、本コンテスト唯二のファンタジー作品であったことも考えると、この健闘は誇るべきものだと思います。
『名も無き兵士の詩』は完成度やストーリーテリング、描写において私がもっとも好きな作品です。また1000字の中で綺麗に収められているのも好評価です。
『街角にて』は本コンテスト中もっともショートショートらしい一編。旧来のショートショートの雰囲気を残す、最近ではなかなか見られなくなった作風です。
『虹になりたい』は締め切り間近に送られてきたサスペンス調の一編。とことんまで練り込まれた筋書きと構成は、見事の一言でした。
総評として、私個人としても運営者としても楽しめたコンテストでした。この場をお借りして作品を投稿してくださった皆様と読者として参加してくださった皆様に、改めてお礼申し上げます。
コンテストの最中にも関わらず、またやって欲しい、というご意見を少なからずいただきました。実際にやってみると思っていたよりも大変で、できるかなあ、気力が続くかなあ、という心配はありますが、同じものではなくてもまた何らかの企画はやってみようと思ってはいます。気長にお待ちください。
本コンテストはこれで終了いたします。ですが本コンテストを通じて広がった交流や、得られた感性は継続していくものだと思います。それらを大切にしていただきたいと思います。
また、本コンテストに際してオンライン小説読み専門のぽん様、へたれファンタジー置場の井上斑猫様から感想をいただきました。そちらもあわせてお楽しみいただけましたら、と思います。
皆様、どうもありがとうございました。
(茶林 小一 2004.03.11)
作品詳細 No.1〜10 / 作品詳細 No.11〜20 / 「ヨミセン」感想 / 斑猫様感想
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