梅雨も明けて、夏日が続く爽やかな天気に僕たちは揺れていた。

「この日差しが気持ちいい」
「うん」
僕たちは河のほとりで、待ちわびていた日の光を浴びている。
こうしていると、自分は生きているんだと、そういう気持ちになる。
まるで空に浮かんでいるようだ。
夢見心地というべきだろうか。

「ねえ、昨日ふしぎな夢を見たんだ」
隣で友達がそう言った。
「へえ、どんな?」
僕は返事をした。
「晴天の霹靂っていうのかな、突然大雨が降るんだ」
「ふうん」
「怖いよね」
「そうかな、それが自然っていうもんだろ」
「・・・うん」



次の日、大雨とともに雷が落ちた。
空は大きな黒いかたまりに覆われ、昼間であるのに夜のような薄暗い空模様となった。

友達は死んだみたいだった。

しかし特別悲しいということもない。
昨日彼がそう言ったのは偶然なのかどうかも知りたいとは思わなかった。
だけど、彼がいなくなって自分が生きていることが理不尽だと思った。

滴り落ちる雨の雫を振り払おうともせず、ただ漂っていた。
身体はもうくしゃくしゃになり、
自分ももう死んでしまうのかと思うと妙に悲しくなってきた。

そんな自分を誰かが見ていた。
「ねえ、雨、冷たくない?」
赤い傘と黄色い長靴の似合った女の子がこちらを見ていた。
「・・・・・・」
「ほら、傘、貸したげる」
「・・・・・・」
「明日、また取りにくるからね」

バシャバシャとどろんこの中を走って、女の子は視界から消えた。
雨がかからない。
傘を立ててくれていた。
女の子はびしょぬれになったのだろうか。

人間は、雨をしのごうと思えば雨宿りできる。
雨宿りできなくても傘があれば濡れずにすむ。
しかし、あの女の子は傘を預けてくれた。
人間ってふしぎだな。

なんで僕には足がないんだろう。
僕はここに根付いてからずっと同じ景色を見ている。

太陽が西日に傾くのが見えた。
どうやら雨はあれからすぐにやんだらしい。
いわゆる典型的な夏の雨とでもいったところか。

太陽は見えている。
見えているはずなのだが光が当たらない。
傘が邪魔だった。


突風でも吹かない限りどかすことはできない。

「暗い・・・」
僕のとなりで誰かがそう呟いた。

「お前、生きてたんだ。死んでしまったかと思ってた」
「僕も君が死んだと思っていたよ」

今まで何の不思議も感じずに生きてきたけれども、
僕らは思ったより強いみたいだ。


傘があって良かった。

今日も河のほとりで、二輪のひまわりが赤い傘を仲良く差している。

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