さあ、逮捕して。私、さっき人を殺したの。死体はホテルにあるわ。出来ればここまで運んできたかったけれども、どうにも重くてね。仕方なく置いてきたの。場所は駅前のエルホテルよ。寝室にあるからよろしくね。
動機は「すべては愛のしわざ」といったところかしら。貴方たちはよく「痴情のもつれ」なんて品の無い表現を使うけれども。要するに、彼が私以外の女と仲良くするのが嫌だったのよ。彼は私のもの、そして私は彼のものなんだから。彼が他の女といるなんて考えたくもないの。そりゃ、私にもわかってたわ。彼がお店で愛想を振りまくのは仕方ない事。そういうお仕事なんだからって。でも、どうしようもなかった。せめてお金があれば彼を自分の物に出来たかもしれない。でもそんなのは夢物語よね。現実に出来ることといえば、毎日お店に通うことくらい。一緒にいる間、彼は優しかったわ。まるでお姫様みたいに扱ってくれて。だからこそ別れは辛かった。甘い言葉を他の誰かにも囁くのかと思ったら、眠ることさえできなかったわ。
そのうち、だんだんお金がなくなってきて、お店にもなかなか行けなくなってきちゃった。友達は貸してくれないし、カードも全部目一杯。もう、どうしようもなかった。きっと会わなくなったら、彼はすぐに私のことなんか忘れちゃうわ。そして別のお客と仲良くし始めるんでしょう。気が狂いそうだった。誰かに渡すくらいなら、いっそ殺してしまった方がましよ。だから最後のお金で彼を同伴して、ホテルに連れ込んだの。改造した護身用スタンガンで動けなくしてから、金槌で何度も頭を叩いてやった。振り下ろすたびにものすごい音がして、私の頭までぐらぐら回ったわ。そのうちにだんだん興奮してきて、気づいたら、彼の綺麗な顔はぐしゃぐしゃだった。いい気味よ。あんな顔じゃ、もう私以外の誰からも愛されないでしょうね。なんだかとても気分が良かったわ。まるでよく眠った朝みたいに。だから、自首することにしたの。私は彼を殺したんだから。
え、帰っていいですって? どういうことよ。私自身が罪を認めているのよ。セクシャルドロイドの破壊は、この国では民事扱いだから警察の管轄外? 何を言っているの。私が犯したのは「殺人」よ。殺人は立派な刑事事件でしょ? 確かに彼は機械でできていたかもしれないわ。でも私にとっては、血肉の通った人間以上の存在だった。私は間違いなく最愛の人を殺したの。