ことが済んだあと、隣で横たわる彼は右上腕の内側で私の頭を支えながら、首だけ起こしてテレビを見ていた。疲れない? と訊くと、彼は空いた方の手で私の髪を梳いて生返事をし、熱心に画面に見入っている。ワイドショーと大差ない夕方のニュース番組は、列島を過熱させている殺人事件について報道、とはいいがたい野次馬趣味な狂態を相変わらず演じていた。
北海道では自営業の男性が緊縛後に一酸化炭素によって殺された。岩手では会社員の男性が緊縛後に焼き殺された。宮城では肝臓を痛めて入院中だった男性が許可を得て散歩に出たときに刺殺された。長野では帰宅途中の女子高校生が行方不明となりそれから一日半後に不審人物からの一報で撲殺死体となって発見された。群馬では男子中学生が無断欠席したその日に首に絞められた痕のある溺死体となって発見された。千葉では風俗店勤務の女性が失踪し警察に届けがいく矢先に絞殺死体となって発見された。
そんな事件が数日おきに、気まぐれに飛び石するような間隔でここ最近は立て続けに起こっている。いずれも犯人は捕まっておらず、中には触発された模倣犯も混ざっているのではないかと取り沙汰されていた。
そうか、そうだったのか――と、唐突に彼が言った。なにがそうだったのか、見上げると、彼は私の頭の下から腕を抜いて体を起こし、テレビの横の抽斗から果物ナイフを取り出した。柄の部分に刃が収まっている折り畳み式のナイフを、パチン、パクン、パチン、パクンと開閉させながら、彼は私を見た。パチン。露出した刃が淡い照明を反射する。
六つとも同じ人間が関わっている。そう、彼は言った。たまたま聞いてしまったんだ。そいつが今日で終わりにするってことを。場所は東京駅、時間はもうすぐ。方法を思い出して、それでわかった。一酸化炭素中毒で死ぬと死斑は鮮やかな赤になる。岩手の事件は焼いておきながら途中で火を消したってのが不自然だった。肝臓を痛めると死体は黄疸が出る。長野と群馬は少し強引で弱いけど緑と青、千葉の絞殺の場合は顔面が鬱血して暗い紫色になる。
――あいつは虹をかけたかったんだよ。そう言って彼は自分の首筋を鋭く引き裂き、テレビに映った東京駅が騒然としている様子を横目に捉えながら倒れた。私の全身に血しぶきを残して、彼は藍色になった。
私の体を彼の血が伝う。それはぬめぬめと這いまわって最後にはペニスから滴った。