茶林感想 『傘』


■物語・構成
 主人公がひまわりであるということを大オチにした構成。ただ、主人公たちが何らかの植物であることは早いうちにわかるので、大オチはオチとしては機能していないが、主人公=ひまわりという伏線を解決することで物語を雰囲気的に収束させる機能は見て取れます。
 小オチである「傘があって良かった」の一文。友人が生きていたことでなぜ「傘があって良かった」という印象に変わったのか、その気持ちの移り変わりが記されていないし伏線となる文章もないので、読者の側には伝わりにくいです。この部分に関する構成はもう少し錬り込めたかもしれません。

■文体・文法
 奇をてらわない読みやすくて平易な文章。一つ一つの単語の選び方は選別されていると感じました。また、短いセンテンスで切られた文章や会話が小気味よい印象を受けました。

■描写・演出
 1000字という抑制の中で積極的に描けています。一つ一つの描写に味があるので、さらに突き詰めていって欲しい部分ではあります。ただ女の子の描写は物語の進行上で必要だから登場させた、という後付け的なものが見て取れます。もっと上手く隠せるとよかったかもしれません。

■総評
 どちらかといえばテーマ性は薄いか、あっても積極的には伝えようとしない形の雰囲気小説に分類されると思います。
 読みやすく読後感が爽やかなので、読み終わったあとにはちょっぴり得した気分になりますが、全体としての印象は薄い。「この作品はこの人が書いた」という個性がもっと出せるといいのですけど。

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