■物語・構成
日常の一部分を切り取って綴った掌編ですが、切り取り方と舞台設定が個性的です。
冒頭の台詞で「これからどんな話が続くんだろう」と好奇心を刺激され、引き込んでおいて精密な状況描写に移るのは上手い。
後半、冒頭のシーンに戻り登場人物が三人になりますが、この辺りから情景把握が困難になってきます。おそらく文字数の関連で情報を詰め込み、そのことによる弊害が出ているのではないかと予想されます。
■文体・文法
ハードボイルド小説や、80年代恋愛小説的な文法。特に専門用語や緻密な数字を列挙する辺りに顕著に見て取れます。
好奇心を喚起して、作品世界に引き込んでおいてからそれらの描写を見せるという文法は効果的に用いられています。
■描写・演出
精密な描写をいいタイミング、最大限の効果で用いています。
一番の問題は後半、三人の距離感が把握しにくいこと。これはオチにも関係しているので意図的に伏せられていると思われるのですが、そのことが逆に読み手側に状況把握における混乱を誘発している可能性があるので、この辺りの描写と構成を錬り込む必要があるのではないかと思います。
■総評
イメージを想像しやすく、作品内への移入が容易。安心して読める作品だし、好きな人は何度か読んでみたいと思う作品でもあると思います。
1000字小説という縛りがなければおそらくもう一段階いいものに仕上げることができる作品だと思うので、もしも自サイトなどで公開される予定があるなら、文字数を気にせず練り込んでみて欲しいと思わされる一品でした。