■物語・構成
一人称の淡々とした語り口で綴られた作品。オチはありますが落とすためのオチではなく、話を収束させるためのオチで、またそれがテーマの部分にも密接しています。
ただ、オチがそれまでの物語と構成から多少独立した形になっているので、出し方にはもう一工夫できるのではないかと思いました。
■文体・文法
特徴的なものはありませんが、雰囲気のある文章です。
あと、文法的なことを指摘しますと、「訪ねると」は「尋ねると」が正、「どうゆうこと」「どうゆうつもり」は、書き言葉では「どういう」が正しい表記です。
婚約者の圭のことを「ヤツ」で統一しているのですが、”実家では年老いた圭のお母さんが”の部分で圭と表記されていたのが多少気になりました。
もう一点、終盤の”今日サービスエリアまで一緒であんた達が圭を置いて来ちゃったんでしょ??”の文章は、情報を整理して短く、切れ味よく提出できた方がインパクトが出せたと思います。
■描写・演出
親友の描写にはリアリティを感じます。問題は主人公の壊れ方に理解を示せるかどうかなのですが、細かく読んでいくと婚約者を置き忘れたと親友に責任を転嫁しているにも関わらず、騒ぐ素振りも見せない辺りが気になったりとかします。内容から察するに多少の受け答えはしている様子がうかがえるので。
■総評
テーマをしっかりと確立し、書きたいことを奇をてらうことなく綴ったという点で好感の持てる作品です。読み手にも語りたいことがストレートに伝わるので、共感できた方には大きな印象を残すでしょう。
ただ、それをきちんと小説、ものがたりとして昇華できているかどうかという点では疑問は残ります。