茶林感想 『戦の庭を歩むものあり』


■物語・構成
 いわゆる叙述物語で、最初から最後まで叙述形態で記された作品。挿話の成り立ちそのものにテーマ性を絡ませる、という構成を採っています。小説というよりも「ものがたり」に近い形態で綴られており、また内容的にも形態に沿ったものになっています。これは意図的に雰囲気を出そうと試みたものであると思われますが、本作においては成功しているのではないでしょうか。

■文体・文法
 叙事詩的形態で記述と描写を中心に構成されています。
 特筆する点はないのですが、漢字とひらがなのバランスというか、ひらがなで記述した方がよい部分が漢字だったり、漢字で記すべきところがひらがなであったりするのが気になりました。どのくらいを意図的に行っているのかは不明ですが、それによりイメージ牽引力を強める意図であれば、物語文学での漢字とひらがなの使われ方などを勉強されると、より一層の技術的向上が望めるかもしれないと思いました。

■描写・演出
 ”無理矢理長槍を握らされた青年が降り来る矢を受けて倒れる姿”などイメージを喚起させてくれる描写が多く見受けられました。本作においては描写こそが最も大切な要素であると思われますが、しっかりと力を込めて描かれているように感じました。

■総評
 アイルランド・スコットランドの伝承に残っている”泣き女”、バンシーの説話をもとにしたと思われる作品で、長編の中の挿話の一つとか、怪談百物語の一編、という印象です。
 この手の話は読み進めて没入できるか否かというのがポイントになると思います。つまりは上手く嘘をつけているかどうかということなのですが、私の印象では成功しているのではないかと思います。
 読み終えたあとに残るものは多くはありませんが、「お話」としては完成度の高い作品ではないかと思います。

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