茶林感想 『すべては愛のしわざ』


■物語・構成
 一人称で、情報を提示しないことで伏線を提示する手法をふんだんに採り入れた作品です。
 オチを中心に伏線を展開させる構成で、オチは時代背景など設定部分における常識との差異を用いたもの。背景その他をまったく描写しないことを意図的に伏線に用いています。
 構成とバランス、描き方自体は秀逸なのですが、全体のインパクトとしては半転がしからよく言って一転がしといったところで、収束性に乏しい面が伺えます。これはオチに至るまでの盛り上げ不足から来るものではないかと考えられます。

■文体・文法
 全体でも四段落と、段落数が少ない。文字数制限からか、全体的に急いでいる感、詰め込みすぎの感が見受けられます。そのことが主人公の饒舌ぶりと、一方的にまくし立てている印象を演出してはいるのですが、それが同時に盛り上げ不足といった印象にも繋がっています。

■描写・演出
 一つ一つの描写や文章に目立ったもの、引き込まれるものは少ないという印象です。次から次へと新しい情報の提出に移るので、急がされることも要因の一つかと思われます。上記の盛り上げ不足的印象に繋がっている要因の一つもこの描写のもの足りなさによるものです。

■総評
 構成面での面白みを重点に置いた作品。まとまっているが作品から受ける衝撃は小さく、また読み進めさせる牽引力に乏しいという印象です。
 オチは時代背景など設定部分における常識との差異を用いたもので、この常識との差異の部分に焦点を当てるのが作品全体のテーマであると思われます。主人公を変人としているのかこういう考え方があってもよいとしているのかは作品からは読みとれなかったのですが、これは意図的にぼかして「さあ、どうですか?」と提示しているのでしょうか。私はそう捉えたのですが……力の溢れた作品であればこれでも引っ張れるのですが、本作では逆にぼやけた印象を与えてしまったのかなあ、とも。作者様の結論の迷いが表れているのでありましょうか。

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