茶林感想 『色』


■物語・構成
 物語展開と構成自体は素直な仕組みで、また会話文が多いことからシナリオの形態に近いものがあります。内容的にはシナリオ形態の先鋭的な部分と、情景描写の不足、またものがたり的に物足りなく感じる部分の両方が顕著に出ていると思います。

■文体・文法
 情報や接続を意図的に不充分にして、想像力で補わせるという手法を用いています。情報の提出が必要最低限以下に留められているので、読み手側は想像で補いながら読み進めなければならず、読み手の幅を狭くする書き方であると思います。ただこれは持ち味、個性であることも事実ですので、バランス感覚を養えばこの文体でかつ読みやすさも追求した作品も書けるのではないかとは思います。

■描写・演出
 会話文にはセンスと切れ味を感じます。が、情景描写はおざなりです。基本的に映像つきを想定したような印象を全体から受けます。

■総評
 不思議な雰囲気のある作品です。ストーリー内容を含め、綴り方や情報の出し方、会話文の一つ一つが個性的でセンスに溢れた作品で、またそれらが絡み合うことで不思議な雰囲気をつくり出していると考えられます。
 裏を返せばそれらのセンスだけで持っている作品であるともいえます。センスに浸るのは快いけれども、それ以外には何もないので「消費」されやすい作品であると思います。
 この作風のまま、一本何らかのテーマを軸として文字を綴ることができれば、心に響く作品が書けるのではないか、と思います。

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