茶林感想 『微笑み』


■物語・構成
 ぶつ切りのシーンを組み合わせることで一本の筋に仕立てるという構成で成り立っています。個性の感じられる構成と話運びですが、上手く機能しているかどうかは疑問。どちらかといえば作者さんの中でもまだ実験的な用いられ方をしていると感じられ、上手く消化できていないような気がします。結果として、ストーリーの追いにくさ、状況把握の困難さが目立ちます。

■文体・文法
 会話文を――で表現する文法になっていますが、この長さでは無駄が多く不向きでしょう。またレイアウトとしても効果的に用いられているとは言いがたいと思います。
 もしもこの手法を採るなら構成面と練り合わせ、新しいシーンを――ではじまる会話文ではじめ、そこ以外は会話文を使わずに会話文を起点とするシーンで繋いでいく、といった構成にすれば効果的であったと思われます。
 誠、悠、薫の区別がつきにくいことも問題の一つです。まず名前を見て、性別の区別がつきません。意図的なものではあると思うのですが、演出よりも混乱をもたらしている印象の方が強いです。どの台詞が誰の台詞かを一読で把握するのは困難でしょう。

■描写・演出
 誠、悠、薫という男女両性に使える名前を用いた演出に対する実際の反応は上記の通り。効果的に用いるためにはもっと練り込みが必要でしょうし、そうでなくとも混乱を招きかねない本作の構成では逆効果でしょう。三者の書き分けが充分に行われていないことも要因の一つでしょうか。

■総評
 実験的手法が実験のまま終わってしまった作品であると言っていいでしょう。私自身も実験的なことは大好きですからこういった意欲には好感を持つのですが、失敗は失敗であると明確にし、なぜ失敗したのかを分析する必要はあると思います。
 このフロンティア精神はこれからも保持していって欲しいものであると思います。

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