隣のカップルが、僕を見てる。
「なあに、あれ。あんな体型で、ボールが投げられるのかしら」
「さあね。自分で転がってピンにぶつかった方がいいんじゃないか?」
全部聞こえているぞ、お前たち。心の内で毒づきながら、僕は十四ポンドの球を胸まで持ち上げた。
助走。一四〇キロの体重を利用して、加速をかける。腕を軽くスイング。指先はまっすぐ。
僕の指を離れたボールは、レーンの中央を走り、その先にある一〇本のピンで作られたトライアングルゾーンに吸い込まれた。威勢の良い音を立ててピンが跳ね上がる。見事、ストライクだ。
「うっそお!」
「すっげえなあ。あの体型でよくやるぜ」
ふふん。どんなもんだい。ちょっと得意そうな顔で、僕は隣のカップルを睨み付けた。
これくらい、どうって事はないんだぞ。何てったって、僕は球の気持ちを一番よく知っているのだから……。
「おら、どうしたんだよ」
「ほらほら、勇気を出して行ってみろよ。このデブ野郎」
「いつもみたいにそこから転がり落ちるんだよ。のろま」
「本当に、そうやってるとボーリングの球みたいだぜ」
「ははは。いったい何ポンドだよ、それ」
そう。
球の気持ちは、僕が一番よく知っているんだ……。