わたしの家の庭にはちょっとした花壇がありました。
花壇には向日葵やチューリップを中心に、スイートピーやヒヤシンスなど様々な花を植え分けていたのですが、夏のはじめくらいから土の上にアリの群列が目立つようになり、その被害に悩まされていました。
それで先日、思い切って花壇にアリ除けの薬を撒いてみたんです。
効果は絶大でした。薬を撒いた翌日から、花畑の中に何本もの筋をつくっていたアリの群は消えてしまいました。
こんなに効き目があるのなら、もっと早くにしておけばよかった。そう思いました。その日の夜、わたしは久々にぐっすりと眠ることができたんです。
数日は平穏な日々を過ごすことができました。花壇に植えたわたしの子どもたちもすくすくと育っていきました。
ええ。子どものいないわたしにとっては、庭で咲き誇る花たちが実の子どものように愛しいのです。あの子たちがアリにいじめられているのを見るたびに、わたしは心を痛めていたのです。そのアリを追い払えたときの私の喜びといったら。
心安らかな日常は長くは続きませんでした。数日後、わたしがいつものように庭に出たときのこと。わたしはそこにまた、おぞましいものを見てしまったのでした。
何匹ものムカデが、土の上を這い回っていました。
わたしはすぐにムカデを殺す薬を購入し、庭のあちこちに仕掛けました。アリのときほどすぐには効果は出ませんでしたが、それでも数日するとムカデたちも少しずつ姿を消していきました。それだけの手間をかけて、わたしと子どもたちは再び平穏な日々を取り戻したのです。
なのに。それなのに。いったいわたしたちが何をしたというのでしょう。
ある日のこと。庭の方が何だか騒がしいので、気になって見に行ってみました。
美しく整えてあったはずの花壇は荒野と化していました。わたしの子どもたちは根本から折られ、土から引き抜かれて、土の上一面に散らばっていました。いったい何が起こったのかわからず、わたしはその光景を前に立ち竦んでいました。
しばらくして正気を取り戻したわたしは、道に飛び出し、辺りを見回しました。視界の遠く向こう側、大きな畦道の向かい側に、わたしの子どもを手に持って振り回している小学生くらいの人影が二つ見つかりました。
わたしの頭に血が上りました。
ヤツらが子どもたちを殺したのは間違いない。それもおそらく、悪戯心に。その証拠にどうだ。私の子どもを振り回している、ヤツらのあの楽しそうな姿は。
このまま放っておけば、ヤツらはまた子どもたちに危害を加える。わたしの子どもたちに害をなすものは駆除しなければならない。そう思いました。
ムカデの駆除はアリの駆除よりも時間がかかりましたが、それでも追い払うことはできました。人間だって、時間をかければきちんと駆除できるはずです。
わたしは草刈り鎌と包丁を握りしめると、遠くで騒いでいる人影を追いかけました。