SF短歌


■ 茶林小一

新しき発見水と鉄ありき 報告来る遠き星より

彼方より届く光を蓄えて 春の桜を窓に見ている

引き寄せる腕に負けるな桜雨 花びら残せ春過ぎるまで

貴様らの自由になると思うなよ 怒りに今日も地を震わせる

熱いよと助けてくれと街角に 風が聞こえる声に聞こえる

光なき海底二〇〇四海里(マイル) 龍を探して目凝らしている

煮えたぎるマグマの中を泳ぎ出で 来る新世紀を待ちわびるもの

鈴の音のつくる長波に誘われて 笑顔が出会い集うパレード

この道はいつか来た道一瞬の 海馬が見せる淡い既視感

延髄を通り神経駆け抜けて 触れる指先感じる手と手

東京で「つらい」と零すその声が 二進数にて届く大阪

放っておけ飛んでしまえば忘れ去る 宇宙で泣いてるスプートニク

想い出と歴史背負いし鉄橋が 人の咎にてともに果てゆく

見てご覧あれが進化の行く末だ ボタン一つで世界が終わる

恒星のプロミネンスのごとくある 憤怒を何処に持っていこうか

暖かな掌の温もりを拒絶する 二律背反な放射冷却

いつの夜も空の高みに一つ在る 淡く輝く月に焦がれる

降り注ぐ流星群を堰き止めて 目映い海をそばに置きたい

子供らの指をしっかり握りしめ 未来をつくれと囁く唇


シリコンと人工知能でつくられた 庭駆け回るラブリィドッグ
閉ざされた少女の扉開きしは プログラミング越えた即興劇(エチュード)
おかあさんなんであたしはしんじゃうの ラブをのこしてあたししねない
アルバムが頁重ねるそのたびに だんだん減ってゆくフォトグラフ
時流れただ犬だけが残された ワタシシネナイナンデシネナイ


燃え盛る阿鼻叫喚の戦場を 踏み越え進む鉄の猟犬
懐かしき故郷を出て1000哩 雄叫び上げよ月に向かって
柵と名乗る首輪に縛られる 錆びた鎖に繋がれている
貼り付いた赤き血潮は流せども 雨にも消せぬ鉄環の轍
俺たちは所詮奴らの飼い犬と 雫滴る銃架の墓標


鈴の音のつくる長波に誘われて 笑顔が出会い集うパレード
H2燃やしチタンの角を振り 夜空を駆ける強きトナカイ
プレゼント願い吊した靴下が 四次元ポケットになっている
電飾に記憶中枢刺激され カレンダー見て気付く月末
目を閉じて部屋で頭を傾ける 窓にジングルベルが聞こえる
降りしきる白の景色を眺めてる 君の瞳が輝いている
赤緑金の溢れる街角に 彼女が待っているクリスマス


■ 寄稿

井上斑猫

強風にがたつく窓をおさえつつ 赤い大地の嵐を思う

ふり仰ぎ見る星空の深淵に 矮小な身の涙を飛ばす


赤き惑星(ほし)風吹きすさぶ岩平 想うは過去の青き波跡


リーブ

幾千の銀河の果てに見えし夢 過去に眠りし全ての始まり

AQ

「水星だ!」 思慕は飛び立つ 高き覇気 語った人は 星大成す
(回文)

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