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日本のシーレーンを中学はこう授業する(谷和樹氏実践追試)



向井ひとみ(TOSS中学Kサークル・JHS関西)

  谷和樹氏の南沙諸島の授業は、エネルギー問題を国内の問題としてではなく、世界情勢とともに理解させうるすばらしい実践である。      中学での実践では、「日本が困る」と言うだけではなく、世界を視野に入れて考えさせたい。

 基本的な流れは、谷実践そのままで授業を行った。
追加点と変更点は、次の5点。

 1 南沙諸島の戦争の原因を考えさせるまえに、「戦争」の原因を思い起こさせた。
  南沙諸島での戦争の原因はなかなか出て来にくいと考えたからである。
 2 世界地理を学習している中学生なので、国の名前や経済水域に関しては、応答をしながら確認させた。
 3 エネルギーに関する授業をしていなかったため「石油がなくなったらどうなるか」ということが具体的に想像が
  できるような発問を追加。
 4 アラビア半島から日本へのルートがなぜ南沙諸島を通るのかという理由は、生徒に考えさせた。
 5 中学2年生の地理の最終授業のため、最後に5分、語りを入れた。

準備物  谷和樹先生のHPをダウンロード。
      西アジアから日本まで載っている地図。この地図は、地図帳からコピーした、地名が入っているものがよい。

説明1  世界中でたくさんの戦争が起きています。
    今も,世界のどこかで戦争が起きていると言われています。

南沙諸島の場所の地図を提示 (谷氏HPより)

指示1  地図をごらんなさい。
     この部分は「南沙諸島」と呼ばれる地域です。
     地図帳P28で探しなさい。見つかった人は、手を挙げなさい。

 手が挙がると「はやい、1番」「はやい、2番」「はい、3番」と10番まで数える。
「指を指しなさい」「お隣と確認」

指示2  何という海洋上にありますか?
     みんなが持っている地図にも赤で丸い印をつけなさい。
     南沙諸島の部分を拡大して見てみます。

 「海の名前をみんなで言います」。南シナ海であることを確認。
 南沙諸島の地図を提示 (谷氏HPより)

指示3  南沙諸島は,実際には、このように小さな島がたくさん集まっている地域です。
     102個の小さな島と,岩からできています。
     日本の南海上ですね。このHPを見なさい。

  ミリタリークラッシュのデータを提示 (谷氏HPより)

説明2  英語ですね。
     一行目。ミリタリークラッシュと書いてあります。「軍事的な衝突」です。
     これは,これまでに南沙諸島でおきた国同士の「軍事的衝突」を表にしたものです。
     ページをスクロールしてみましょう。
     過去20年間で10回の軍事的な衝突が起きています。
     1999年7月20日にも海軍の船が,漁船を攻撃して沈没させてしまうという事件が起きたばかりです。

「軍事的衝突」は、軍隊が出動し、軍隊同士で争いが起こった状態。
「戦争」は、国家間での争い。

発問 1  今まで、歴史の学習でたくさん戦争のことを勉強しました。
     どんな戦争がありましたか。

 日清戦争、日露戦争、西南戦争、独立戦争、第2次世界大戦、アヘン戦争など

発問2  たくさんでましたね。戦争の原因となったことには、どんなことがありましたか。

 貿易、人種、民族、資源、意見のくい違い、領土のあらそい、習慣、独立など

発問3  いろんな原因がありますね。では、南沙諸島での戦争の原因は何だと思いますか。予想してごらんなさい。                        漢字2字です。小学校の低学年、2年生ぐらいで習う漢字です。

土地 文化 油田

指示4  そう,石油ですね。
     この海域には,埋蔵量200億トンといわれる,世界有数の大油田があると言われています。地図を見て御覧なさい。

 地図を提示 (谷氏HPより)

発問4  点線で囲まれている部分が南沙諸島です。
     緑の三角や四角が全部,石油が発見されていると言われているところです。
     その石油をねらって,この南沙諸島が自分のものだと言って国同士が争っているのです。
     日本は、争いに加わっていますか? はい・いいえ

 はい、いいえで挙手をさせる。
 圧倒的に「いいえ」が多い。理由を言わせると
「日本からは遠い」「日本の経済水域でもないから」

発問5   では、どこの国と,どこの国が争っていると考えられますか?

ベトナム、中国など
地図で海域を確認している。
 1 海域周辺国が直接関係しているのではないかということ 
 2 周辺にはどんな国があるか 
は、中学生なら出させたい。       
出にくいようなら周辺の国ですか?遠い国ですか?と聞いてみる。
 

地図を提示

発問6   正解は、この地図で色を塗っている国です。全部で6カ国あります。
     この6カ国が全部,南沙諸島は自分のモノだと言って争っているのです。
     国の名前を全部言います。
     黄色は?茶色は?赤は? (以下,順にすべて確認する。)

説明3  「マレーシア、ブルネイ、中国、フィリピン、台湾、ベトナム」の6カ国です。
     これらの国々が,石油をねらって,次々にこの小さな島を占領していきました。この地図をごらんなさい。

 

地図を提示

説明4  各国がまるでモザイクのように島を占領している様子を色分けしています。

 このぐらいの英語なら読めるので、星印はどこ?と1つずつ全員で答えさせる。
星印はベトナム,四角はフィリピン,丸がマレーシア,三角が台湾,ピンクの三角が中国であること確認。

発問7  こんなに複雑に各国の領域が入り組んでいたらどんなことがおこると考えられますか?

経済水域が設定できない。どこが境界線かわからなくなる。
勝手に入ってきているといわれるかもしれない。

説明5   いつまた戦争が起こってもおかしくない状態ですね。
     エネルギー問題というのはこのように,一つの国にとって,戦争につながるほどの重大なことなのですね。
     太平洋戦争・湾岸戦争…これまでに起きた戦争の多くは,エネルギー問題が原因です。


夜の地球のポスターを提示。

問8  この写真をみなさい。この写真は何でしょう。

 世界地図

発問9  これは,夜の地球の様子を,人工衛星から撮った写真です。何色が見えますか。

黒、紫、赤、黄色、水色

指示5 この地図を見てわかったこと,気づいたこと,思ったことを箇条書きでできるだけたくさんノートに書きなさい。

時間がなければ、直接言わせてもよい。
 ・日本は明るい  ・先進国は明るい  ・いろんな色がある。
 ・水色はオーロラだ
 ・黄色は電気ではないか

説明6   白いところは、電気、都市の光です。赤いところは、油田の光です。
      ピンクは山火事や焼き畑農業の光です。北極にある水色の光は、オーロラです。日本海にある光は、漁り火です。

 漁り火:夜、魚を誘い寄せるための漁船のあかりのこと

説明7  日本はとても光っていますね。 みなさんの地図で日本にマルをつけなさい。
     日本も,たくさんのエネルギーを使っています。そのエネルギーのうち,80%は海外からの輸入です。
     そのうち石油は99.7%が輸入です。

この内容は、簡単な応答でも中学生なら可能である。

発問10  どこから輸入しているのですか?前の写真で,何色の光のところですか?

 西アジア。中東と言う呼び名も確認する。

説明8  皆さんの地図でも西アジアにマルをつけなさい。日本の石油は80%がこのあたり,西アジアから送られてくるのです。
     スーパータンカーと呼ばれる大きなタンカーで海をわたって送られてきます。
     たくさんの燃料を使い,たくさんの日にちをかけて,たくさんのお金を使って運んでくるのです。

「 日本の石油は80%がこのあたり,中東から送られてくるのです。」
既習事項だったので、「輸入される石油のうち、何%が西アジアからのものですか?」と尋ね、80%と生徒から言わせた。

発問11   この赤い光のところ,ペルシャ湾から,日本まで,石油を載せた船は、どのルートでやってくると思いますか。
      予想で,みなさんが持っている地図(あらかじめ白地図を配布)その地図に線を引いてごらんなさい。

机間巡視をするとほどんどがマラッカ海峡を通り抜ける線を書いていた。
追試報告にあるよう、3通りでるが、中学では、圧倒的多数でマラッカ海峡を通り抜ける線を書く。
指名して、プロジェクター上で、指でなぞらせた。同じ人?と挙手し確認。

 「同じ答えが多いですね。なぜここを通ったのですか?」と聞くと
 「一番近いから」と答えた。
 「なぜ、近い方がいいのですか?」と追って聞いた。
 「近道しないと値段が上がる」と答えた。

発問12  何か気づいたことはありませんか?

 南沙諸島を通る。

発問13  もし南沙諸島で紛争が起こったらどんなことがおこりますか?

「日本に石油が運ばれてこない」
「船が攻撃される」
「石油が海に流れる」
 エネルギーに関する授業をしていなかったので、ここまでの発想で止まったクラスが多かった。

指示6  石油が運ばれてこなくなると、どんなことがおこりますか。予想してノートに箇条書きで書きなさい。

「電気が使えない」
「夏暑い」
「ご飯が炊けない」と一般的な答えであったため、追加して聞いた。
「朝、起きました。何をしますか?」「顔を洗う。」
  「水道は出ますか?」「出る」と答える。
  「水道局のコントロールは、コンピューターで行っています。できるかな?」
  「シャワーは使えますか?」
  「洗濯はできますか?」石鹸もなくなることを付け足す。 
ここまで具体的に話すとそれまで穏やかな顔が変わってくる。

発問14   これを見てみましょう。http://www.iris.dti.ne.jp/~rgsem/sealane.html (7.html)
     日本のシーレーンです。 どこを通っていますか?

南沙諸島である。

シーレーンについては、簡単に補足説明する。
シーレーン: 日本が必要とする食料・物資・エネルギーを運んでくる航路のこと・
        これは、地域ではなくライン上のことを指す。
        例えば、インド洋を走る日本の船が攻撃をされた場合、日本はこれを有事とみなす。
        従って公然たる主権の侵害として自衛隊の発動が可能となる。

説明9   そう,いつ戦闘状態になるかわからない,南沙諸島の近くを通らなければならないのです。
      日本のタンカーが南沙諸島を通っている時に戦争が起きたら大変ですね。

発問15   日本の貿易船の何%が南沙諸島の近くを通ると考えますか?
      ヒントです。1,10% 2,30% 3,50%

挙手させる。
 3番です。もちろんこの貿易船の中には、食料品もあります。

指示7  今日の勉強の感想を短く書いてごらんなさい。

語り    南沙諸島は、日本の領域でも経済水域でもありません。南沙諸島での紛争は、日本の国には何も関係ないように思います。
      私たちはふだんの生活の中で、「私には関係ない」「私のクラスのことちゃう」と知らん顔していることがないですか?
      私たちは一人で生きているのではありません。お互いいろいろな形で関連し、つながって生きています。
      国際関係も同じです。
       「関係ない」ではなく、いろいろなことがつながり合っていると考え いろいろなことを学んでいってほしいと思います。
       21世紀は、あなたたちの時代です。今以上にすばらしい、世界みんなが幸福になれる世界を作っていくのは、
      他の誰でもない、あなたたちです。

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