名和明氏撮影
 
<ニホンカモシカ>
Capricornis crispus
 
ニホンカモシカは偶蹄目(蹄が2つある)の仲間です。 偶蹄目には、ウシやシカ、ヤギやヒツジも含まれます。
 ニホンカモシカは、本州、四国、九州の山岳地帯に生息する日本特産種の動物です。原始的な形態を残し、氷河時代からの生き残りと考えられています。
 また、一時は乱獲によって数が激減したことなどから、1934年に国の天然記念物に指定され、さらに1955年には特別天然記念物に格上げされています。
 昔から高山の岩場に棲む孤高の動物と考えられてきました。でも、実際は落葉広葉樹の森林が主要な生息場所です。休息場所として岩場を好んだり、ときどき高山にまで移動することがあり、このような場所で特に目につきやすかったからでしょう。
 鈴鹿の個体群は、他地域の個体群に比べ体色が黒っぽいのが特徴です。
私たちのフィールドの鈴鹿山脈では80年代まではカモシカをよく見ることができ、カモシカの親子を見ることもありましたが、今ではあまり見ることができません。
  それが、どうしてなのかは判っていませんが、そんなカモシカと人間との共存ができるような活動を続けています。我もと思われん方は、活動に参加してみてください。

Q&A

 カモシカは、巣を持っているのでしょうか?
巣を作り生活をするということをする動物なのでしょうか? 
 
A
 巣というのは、多くの動物では、繁殖時のみ作ります。 したがって、巣といっても人間の家のようなものではありません。
  カモシカは基本的に、一夫一妻制でなわばりをもちます。 なわばりは、同性同士、つまりオス同士、メス同士で排他的に守る範囲で、カモシカはそのなわばりの中でほとんど過ごします。 そのなわばりは、つがいとなっているオスとメスとでほとんど重なります。 つまり、そのなわばりの範囲がカモシカの家族の”我が家”に相当するのかもしれません。ただし、この範囲は10ha前後から100ha近くまでと 非常に広い範囲です。
 カモシカの交尾期はだいたい10〜12月で、出産は翌年の5月前後です。 出産する際には藪の中の余りまわりから見えない場所を選ぶという話もありますが、子供もすぐ歩けるので、出産後はすぐに親子(母子)で歩きます。
 というわけで、カモシカは巣というものは作らないというのが正解です。
 

 よく脚が細くて綺麗な女性を例えて「かもしかのような脚」って言いますが、かもしかって脚は細くないですよね、 何故ですか?  
A

  国語学者では無いので本当のところは、判りませんが、脚の形容に例えられるカモシカは、漢字で書くと「羚羊」訓読み?でカモシカ、音読みですとレイヨウ、即ちアフリカのサバンナに棲息する同じウシ科のアンテロープと呼ばれるカモシカ類の事では無いかと思われます。特にガゼルは華奢で細く、そのイメージに合います。
 (ニホンカモシカは、アフリカに生息するアンテロープ類とは少し違う仲間に属します)
 アンテロープ類は、草原に生息し、走ることに適した体となっており、脚もすらりと長いです。一方、ニホンカモシカは、森林に棲み、外敵から逃げるときも、外敵が容易に近づけない岩場に逃げ込んで、身を守ります。従って、岩場で動きやすい体で、脚もあまり長くありません。
 多分この形容の仕方自体そう古いものでは無くカモシカという動物が、動物園やテレビで一般に認知されるようになってからの言葉だと思われます。 
  かつては、ニホンカモシカの個体数は極めて少なく、「幻の動物」などと呼ばれるほどで、日本にカモシカがいることもあまり知られておらず、 カモシカと言えば、アフリカに棲むアンテロープ類をイメージするのが普通だったのだろうと思います。そのために、「カモシカのような脚」というと、皆アンテロープ類の脚を思い浮かべて疑問に思われなかったのでしょう。 それが1970年以降、ニホンカモシカがよく見かけられるようになり、その存在も、日本の中で広く知られるようになったことで、イメージの不一致が生み出されたのだと思われます。 一度増えたニホンカモシカですが、現在、一部の地域では、再び見られなくなってきています。いつか、また、「カモシカのような脚」という表現に疑問を持たなくなる日が来ないように、彼らの生息状況とその生息地の近くで生活する人々の暮らしについて、配慮してゆかなければなりません。