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拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取り扱い又は刑罰に関する条約(拷問等禁止条約)


採択 1984年(昭和59)12月10日国連第39総会
効力発生 1987年(昭和62)6月26日
日本国 1999年(平成11)6月29日加入書寄託、7月5日公布(条約6号)、7月29日発効

前文
 この条約の締約国は、国際連合憲章において宣明された原則によれば、人類杜会のすべての構成員の平等のかつ奪い得ない権利を認めることが世界における自由、正義及び平和の基礎を成すものであることを考慮し、これらの権利が人間の固有の尊厳に由来することを認め、人権及び基本的自由の普遍的な尊重及び遵守を助長すべき義務を国際連合憲章、特にその第55条の規定に基づいて諸国が負っていることを考慮し、何人も拷問又は残虐な、非人道的な若しくは品位を傷つける取扱い若しくは刑罰を受けないことを定めている世界人権宣言第5条及び市民的及び政治的権利に関する国際規約第7条の規定に留意し、また、1975年12月9日に国際連合総会で採択された拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰を受けることからのすべての人の保護に関する宣言に留意し、拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰を無くすための世界各地における努力を一層効果的なものとすることを希望して、次のとおり協定した。

第1部

第1条 この条約の適用上、「拷問」とは、身体的なものであるか精神的なものであるかを問わず人に重い苦痛を故意に与える行為であって、本人若しくは第三者から情報若しくは自白を得ること、本人若しくは第三者が行ったか若しくはその疑いがある行為について本人を罰すること、本人若しくは第三者を脅迫し若しくは強要することその他これらに類することを目的として又は何らかの差別に基づく理由によって、かつ、公務員その他の公的資格で行動する者により又はその扇動により若しくはその同意若しくは黙認の下に行われるものをいう。「拷問」には、合法的な制裁の限りで苦痛が生ずること又は合法的な制裁に固有の若しくは付随する苦痛を与えることを含まない。
2 1の規定は、適用範囲が一層広い規定を含んでおり又は含むことのある国際文書又は国内法令に影響を及ぼすものではない。

第2条 締約国は、自国の管轄の下にある領域内において拷問に当たる行為が行われることを防止するため、立法上、行政上、司法上その他の効果的な措置をとる。
2 戦争状態、戦争の脅威、内政の不安定又は他の公の緊急事態であるかどうかにかかわらず、いかなる例外的な事態も拷問を正当化する根拠として援用することはできない。
3 上司又は公の機関による命令は、誇問を正当化する根拠として援用することはできない。

第3条 締約国は、いずれの者をも、その者に対する拷問が行われるおそれがあると信ずるに足りる実質的な根拠がある他の国へ追放し、送還し又は引き渡してはならない。
2 権限のある当局は、1の根拠の有無を決定するに当たり、すべての関連する事情(該当する場合には、関係する国における一貫した形態の重大な、明らかな又は大規摸な人権侵害の存在を含む。)を考慮する。

第4条 締約国は、考問に当たるすべての行為を自国の刑法上の犯罪とすることを確保する。拷問の未遂についても同様とし、拷問の共謀又は拷問への加担に当たる行為についても同様とする。
2 締約国は、1の犯罪について、その重大性を考慮した適当な刑罰を科することができるようにする。

第5条 締約国は、次の場合において前条の犯罪についての自国の裁判権を設定するため、必要な措置をとる。
 (a) 犯罪が自国の管轄の下にある領域内で又は自国において登録された船舶若しくは航空機内で行われる場合
 (b) 容疑者が自国の国民である場合
 (c) 自国が適当と認めるときは、被害者が自国の国民である場合
2 締約国は、容疑者が自国の管轄の下にある領域内に所在し、かつ、自国が1のいずれの締約国に対しても第8条の規定による当該容疑者の引渡しを行わない場合において前条の犯罪についての自国の裁判権を設定するため、同様に、必要な措置をとる。
3 この条約は、国内法に従って行使される刑事裁判権を排除するものではない。

第6条 第4条の犯罪の容疑者が領域内に所在する締約国は、自国が入手することができる情報を検討した後、状況によって正当であると認める場合には、当該容疑者の所在を確実にするため、抑留その他の法的措置をとる。この措置は、当該締約国の法令に定めるところによるものとするが、刑事訴訟手続又は犯罪人引渡手読を開始するために必要とする期間に限って継続することができる。
2 1の措置をとった締約国は、事実について直ちに予備調査を行う。
3 1の規定に基づいて抑留された者は、その国籍国の最寄りの適当な代表と又は、当該者が無国籍者である場合には、当該者が通常居住している国の代表と直ちに達絡を取ることについて援助を与えられる。
4 いずれの国も、この条の規定に基づいていずれかの者を抑留する場合には、前条1(a)、(b)又は(c)の場合に該当する国に対し、当該者が抑留されている事実及びその抑留が正当とされる事情を直ちに通報する。2の予備講査を行う国は、その結果をこれらの国に対して速やかに報告するものとし、また、自国が裁判権を行使する意図を有するか否かを明らかにする。

第7条 第4条の犯罪の容疑者がその管轄の下にある領域内で発見された締約国は、第5条の規定に該当する場合において、当該容疑者を引き渡さないときは、訴追のため自国の権限のある当局に事件を付託する。
2 1の当局は、自国の法令に規定する通常の重大な犯罪の場合と同様の方法で決定を行う。第5条2の規定に該当する場合における訴追及び有罪の言渡しに必要な証拠の基準は、同条1の規定に該当する場合において適用される基準よりも緩やかなものであってはならない。
3 いずれの者も、自己につき第4条の犯罪のいずれかに関して訴訟手続がとられている場合には、そのすべての段階において公正な取扱いを保障される。

第8条 第4条の犯罪は、締約国間の現行の犯罪人引渡条約における引渡犯罪とみなされる。締約国は、相互間で将来締結されるすべての犯罪人引渡条約に同条の犯罪を引渡犯罪として含めることを約束する。
2 条約の存在を犯罪人引渡しの条件とする締約国は、自国との間に犯罪人引渡条約を締結していない他の締約国から犯罪人引渡しの請求を受けた場合には、この条約を第4条の犯罪に関する犯罪人引渡しのための法的根拠とみなすことができる。この犯罪人引渡しは、請求を受けた国の法令に定める他の条件に従う。
3 条約の存在を犯罪人引渡しの条件としない締約国は、犯罪人引渡しの請求を受けた国の法令に定める条件に従い、相互間で、第4条の犯罪を引渡犯罪と認める。
4 第4条の犯罪は、締約国間の犯罪人引渡しに関しては、当該犯罪が発生した場所のみでなく、第5条1の規定に従って裁判権を設定しなければならない国の領域内においても行われたものとみなされる。

第9条 締約国は、第4条の犯罪のいずれかについてとられる刑事訴訟手続に関し、相互に最大限の援助(当該訴訟手続に必要であり、かつ、自国が提供することができるすべての証拠の提供を含む。)を与える。
2 締約国は、相互間に司法上の相互援助に関する条約が存在する場合には、当該条約に合致するように1に規定する義務を履行する。

第10条 締約国は、拷問の禁止についての教育及び情報が、逮捕され、抑留され又は拘禁される者の身体の拘束、尋問又は取扱いに関与する法執行の職員(文民であるか軍人であるかを問わない。)、医療職員、公務員その他の者に対する訓練に十分取り入れられることを確保する。
2 締約国は、1に規定する職員、公務員その他の者の義務及び職務に関する規則又は指示に拷問の禁止を含める。

第11条 締約国は、拷問が発生することを無くすため、尋問に係る規則、指示、方法及び慣行並びに自国の管轄の下にある領域内で逮捕され、抑留され又は拘禁される者の身体の拘束及び取扱いに係る措置についての体系的な検討を維持する。

第12条 締約国は、自国の管轄の下にある領域内で拷問に当たる行為が行われたと信ずるに足りる合理的な理由がある場合には、自国の権限のある当局が迅速かつ公平な調査を行うことを確保する。

第13条 締約国は、自国の管轄の下にある領域内で拷問を受けたと主張する者が自国の権限のある当局に申立てを行い迅速かつ公平な検討を求める権利を有することを確保する。申立てを行った者及び証人をその申立て又は証拠の提供の結果生ずるあらゆる不当な取扱い又は脅迫から保護することを確保するための措置がとられるものとする。

第14条 締約国は、拷問に当たる行為の被害者が救済を受けること及び公正かつ適正な賠償を受ける強制執行可能な権利を有すること(できる限り十分なリハビリテーションに必要な手段が与えられることを含む。)を自国の法制において確保する。被害者が拷問に当たる行為の結果死亡した場合には、その被扶養者が賠償を受ける権利を有する。
2 1の規定は、賠償に係る権利であって被害者その他の者が国内法令に基づいて有することのあるものに影響を及ぼすものではない。

第15条 締約国は、拷問によるものと認められるいかなる供述も、当該供述が行われた旨の事実についての、かつ、拷問の罪の被告人に不利な証拠とする場合を除くほか、訴訟手続における証拠としてはならないことを確保する。

第16条 締約国は、自国の管轄の下にある領域内において、第1条に定める拷問には至らない他の行為であって、残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰に当たり、かつ、公務員その他の公的資格で行動する者により又はその扇動により若しくはその同意若しくは黙認の下に行われるものを防止することを約束する。特に、第10条から第13条までに規定する義務については、これらの規定中「拷問」を「他の形態の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰」と読み替えた上で適用する。
2 この条約は、残虐な、非人道的な若しくは品位を傷つける取扱い若しくは刑罰を禁止し又は犯罪人引渡し若しくは追放に関連する他の国際文書又は国内法令に影響を及ぼすものではない。

第2部

第17条 拷問の禁止に関する委員会(以下「委員会」という。)を設置する。委員会は、この部に定める任務を行う。委員会は、徳望が高く、かつ、人権の分野において能力を認められた10人の専門家により構成され、これらの専門家は、個人の資格で職務を遂行する。これらの専門家については、締約国が、委員会の委員の配分が地理的に衡平に行われること及び法律関係の経験を有する者の参加が有益であることを考慮して選出する。
2〜7 〔略〕

第18条 〔略〕

第19条 締約国は、自国がこの条約に基づく約束を履行するためにとった措置に関する報告を、この条約が自国について効力を生じた後1年以内に、国際連合事務総長を通じて委員会に提出する。その後は、締約国は、新たにとった措置に関する補足報告を4年ごとに提出し、及び委員会が要請することのある他の報告を提出する。
2〜4 〔略〕

第20条 委員会は、いずれかの締約国の領域内における拷問の制度的な実行の存在が十分な根拠をもって示されていると認める信頼すべき情報を受領した場合には、当該締約国に対し、当該情報についての検討に協力し及びこのために当該情報についての見解を提出するよう要請する。
2 委員会は、関係締約国が提出することのあるすべての見解を他の入手可能なすべての情報と共に考慮した上で、正当であると認める場合には、1人又は2人以上の委員を指名して秘密調査を行わせ及び委員会への早急な報告を行わせることができる。
3〜5 〔略〕

第21条 この条約の締約国は、この条約に基づく義務が他の締約国によって履行されていない旨を主張するいずれかの締約国からの通報を委員会が受理し及び検討する権限を有することを認める宣言を、この条の規定に基づいていつでも行うことができる。この通報は、委員会が当該権限を有することを自国について認める宣言を行った締約国によるものである場合に限り、この条に定める手続に従って受理し及び検討することができる。委員会は、宣言を行っていない締約国についての通報をこの条の規定の下で取り扱ってはならない。 〔以下略〕
2 〔略〕

第22条 この条約の締約国は、自国の管轄の下にある個人であっていずれかの締約国によるこの条約の規定の違反の被害者であると主張する者により又はその者のために行われる通報を、委員会が受理し及び検討する権限を有することを認める宣言を、この条の規定に基づいていつでも行うことができる。委員会は、宣言を行っていない締約国についての通報を受理してはならない。
2〜8 〔略〕

第23条〜第24条〔略〕

第3部

第25条〜第27条 〔略〕

第28条 各国は、この条約の署名若しくは批准又はこの条約への加入の際に、委員会が第20条に規定する権限を有することを認めない旨を宣言することができる。
2 1の規定に従って留保を付した締約国は、国際連合事務総長に対する通告により、いつでもその留保を撤回することができる。

第29条 この条約のいずれの締約国も、改正を提案し及び改正案を国際連合事務総長に提出することができる。同事務総長は、締約国に対し改正案を直ちに送付するとともに、当該改正案についての審議及び投票のための締約国会議の開催についての賛否を同事務総長に通報するよう要請する。その送付の日から4箇月以内に締約国の3分の1以上が会議の開催に賛成する場合には、同事務総長は、国際連合の主催の下に会議を招集する。会議に出席しかつ投票する締約国の過半数によって採択された改正案は、受諾のため、国際連合事務総長によりすべての締約国に送付される。
2〜3 〔略〕

第30条 この条約の解釈又は適用に関する締約国間の紛争で交渉によって解決することができないものは、いずれかの紛争当事国の要請により、仲裁に付される。仲裁の要請の日から6箇月以内に仲裁の組織について紛争当事国が合意に達しない場合には、いずれの紛争当事国も、国際司法裁判所規程に従って国際司法裁判所に紛争を付託することができる。
2〜3 〔略〕

第31条〜第33条 〔略〕