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障害者基本法

公布 1970年(昭和45)5月21日 法律第84号
施行 1970年(昭和45)5月21日
改正 1993年(平成5)12月3日 法律第94号

第1章 総則

(目的)
第1条 この法律は、障害者のための施策に関し、基本的理念を定め、及び国、地方公共団体等の責務を明らかにするとともに、障害者のための施策の基本となる事項を定めること等により、障害者のための施策を総合的かつ計画的に推進し、もって障害者の自立と社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動への参加を促進することを目的とする。

(定義)
第2条 この法律において「障害者」とは、身体障害、精神薄弱又は精神障害(以下「障害」と総称する。)があるため、長期にわたり日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける者をいう。

(基本的理念)
第3条 すべて障害者は、個人の尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい処遇を保障される権利を有するものとする。
2 すべて障害者は、社会を構成する一員として社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会を与えられるものとする。

(国及び地方公共団体の責務)
第4条 国及び地方公共団体は、障害者の福祉を増進し、及び障害を予防する責務を有する。
 
(国民の責務)
第5条 国民は、社会運帯の理念に基づき、障害者の福祉の増進に協力するよう努めなければならない。

(自立への努力)
第6条 障害者は、その有する能力を活用することにより、進んで社会経済活動に参加するよう努めなければならない。
2 障害者の家庭にあっては、障害者の自立の促進に努めなければならない。

(障害者の日)
第6条の2 国民の間に広く障害者の福祉についての関心と理解を深めるとともに、障害者が社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に積極的に参加する意欲を高めるため、障害者の日を設ける。
2 障害者の日は、12月9日とする。
3 国及び地方公共団体は、障害者の日の趣旨にふさわしい事業を実施するよう努めなければならない。

(施策の基本方針)
第7条 障害者の福祉に関する施策は、障害者の年齢並びに障害の種別及び程度に応じて、かつ、有機的連携の下に総合的に、策定され、及び実施されなければならない。

(障害者基本画等)
第7条の2 政府は、障害者の福祉に関する施策及び障害の予防に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、障害者のための施策に関する基本的な計画(以下「障害者基本計画」という。)を策定しなけれぱならない。
2 都道府県は、障害者基本計画を基本とするとともに、当該都道府県における障害者の状況等を踏まえ、当該都道府県における障害者のための施策に関する基本的な計画(以下「都道府県障害者計画」という。)を策定するよう努めなけれぱならない。
3 市町村は、障害者基本計画(都道府県障害者計画が策定されているときは、障害者基本計画及び都道府県障害者計画)を基本とするとともに、地方自治法(昭和22年法律第67号)第2条第5項の基本構想に即し、かつ、当該市町村における障害者の状況等を踏まえ、当該市町村における障害者のための施策に関する基本的な計画(以下「市町村障害者計画」という。)を策定するよう努めなければならない。
4 内閣総理大臣は、関係行政機関の長に協議するとともに、中央障害者施策推進協議会の意見を聴いて、障害者基本計画の案を作成し、閣議の決定を求めなければならない。
5 都道府県は、都道府県障害者計画を策定するに当たっては、地方障害者施策推進協議会の意見を聴かなけれぱならない。地方障害者施策推進協議会を設置している市町村が市町村障害者計画を策定する場合においても、同様とする。
6 政府は、障害者基本計画を策定したときは、これを国会に報告するとともに、その要旨を公表しなけれぱならない。
7 都道府県又は市町村は、都道府県障害者計画又は市町村障害者計画を策定したときは、その要旨を公表しなければならない。
8 第4項及び第6項の規定は障害者基本計画の変更について、第5項及び前項の規定は都道府県障害者計画又は市町村障害者計画の変更について準用する。

(法制上の措置等)
第8条 政府は、この法律の目的を達成するため、必要な法制上及び財政上の措置を講じなければならない。

(年次報告)
第9条 政府は、毎年、国会に、障害者のために講じた施策の概況に関する報告書を提出しなければならない。

第2章 障害者の福祉に関する基本的施策

(医療)
第10条 国及び地方公共団体は、障害者が生活機能を回復し、又は取得するために必要な医療の給付を行うよう必要な施策を講じなければならない。
2 国及び地方公共団体は、前項に規定する医療の研究及び開発を促進しなけれぱならない。

(施設への入所、在宅障書者への支援等)
第10条の2 国及び地方公共団体は、障害者がその年齢並びに障害の種別及び程度に応じ、施設への入所又はその利用により、適切な保護、医療、生活指導その他の指導、機能回復訓練その他の訓練又は授産を受けられるよう必要な施策を講じなければならない。
2 国及び地方公共団体は、障害者の家庭を訪問する等の方法により必要な指導若しくは訓練が行われ、又は日常生活を営むのに必要な便宜が供与されるよう必要な施策を講じなけれぱならない。
3 国及び地方公共団体は、障害者の障害を補うために必要な補装具その他の福祉用具の給付を行うよう必要な施策を講じなければならない。
4 国及び地方公共団体は、前3項に規定する指導、訓練及び福祉用具の研究及び開発を促進しなけれぱならない。

(重度障害者の保護等)
第11条 国及び地方公共団体は、重度の障害があり、自立することの著しく困難な障害者について、終生にわたり必要な保護等を行うよう努めなければならない。

(教育)
第12条 国及び地方公共団体は、障害者がその年齢、能力並びに障害の種別及び程度に応じ、充分な教育が受けられるようにするため、教育の内容及び方法の改善及び充実を図る等必要な施策を講じなければならない。
2 国及び地方公共団体は、障害者の教育に関する調査研究及び環境の整備を促進しなければならない。

第13条 削除

(職業指導等)
第14条 国及び地方公共団体は、障害者がその能力に応じて適当な職業に従事することができるようにするため、その障害の程度等に配慮した職業指導、職業訓練及ぴ職業紹介の実施その他必要な施策を講じなければならない。
2 国及び地方公共団体は、樟害者に適した職種及び職域に関する調査研究を促進しなければならない。

(雇用の促進等)
第15条 国及び地方公共団体は、障害者の雇用を促進するため、障害者に適した職種又は職域について障害者の優先雇用の施策を講じなければならない。
2 事業主は、社会連帯の理念に基づき、障害者の雇用に関し、その有する能力を正当に評価し、適当な雇用の場を与えるとともに適正な雇用管理を行うことによりその雇用の安定を図るよう努めなければならない。
3 国及び地方公共団体は、障害者を雇用する事業主に対して、障害者の雇用のための経済的負担を軽減し、もってその雇用の促進及び継続を図るため、障害者が雇用されるのに伴い必要となる施設又は設備の整備等に要する費用の助成その他必要な施策を講じなけれぱならない。

(判定及び相談)
第16条 国及び地方公共団体は、障害者に関する各種の判定及び相談業務が総合的に行われ、かつ、その制度が広く利用されるよう必要な施策を講じなければならない。

(措置後の指導助言等)
第17条 国及び地方公共団体は、障害者が障害者の福祉に関する施策に基づく各種の措置を受けた後日常生活又は社会生活を円滑に営むことができるよう指導助言をする等必要な施策を講じなければならない。

(施設の整備)
第18条 国及び地方公共団体は、第10条第2項、第10条の2第1項及び第4項、第12条並びに第14条の規定による施策を実施するために必要な施設を整備するよう必要な措置を講じなければならない。
2 前項の施設の整備に当たっては、同項の各規定による施策が有機的かつ総合的に行なわれるよう必要な配慮がなされなければならない。

(専門的技術職員等の確保)
第19条 前条第1項の施設には、必要な員数の専門的技術職員、教職員その他の専門的知識又は技能を有する職員が配置されなけれぱならない。
2 国及び地方公共団体は、前項に規定する者その他障害者の福祉に関する業務に従事する者及ぴ第10条の2第3項に規定する福祉用具に関する専門的技術者の養成及び訓練に努めなけれぱならない。

(年金等)
第20条 国及び地方公共団体は、障害者の生活の安定に資するため、年金、手当等の制度に関し必要な施策を講じなければならない。

(資金の貸付け等)
第21条 国及び地方公共団体は、障害者に対し、事業の開始、就職これらのために必要な知識技能の修得等を援助するため、必要な資金の貸付け、手当の支給その他必要な施策を講じなければならない。

(住宅の確保)
第22条 国及び地方公共団体は、障害者の生活の安定を図るため、障害者のための住宅を確保し、及び障害者の日常生活に適するような住宅の整備を促進するよう必要な施策を講じなければならない。

(公共的施設の利用)
第22条の2 国及び地方公共団体は、自ら設置する官公庁施設、交通施設その他の公共的施設を障害者が円滑に利用できるようにするため、当該公共的施設の構造、設備の整備等について配慮、しなければならない。
2 交通施設その他の公共的施設を設置する事業者は、社会連帯の理念に基づき、当該公共的施設の構造、設備の整備等について障害者の利用の便宜を図るよう努めなければならない。
3 国及び地方公共団体は、事業者が設置する交通施設その他の公共的施設の構造、設備の整備等について障害者の利用の便宜を図るための適切な配慮、が行われるよう必要な施策を講じなけれぱならない。

(情報の利用等)
第22条の3 国及び地方公共団体は、障害者が円滑に情報を利用し、及びその意思を表示できるようにするため、電気通信及び放送の役務の利用に関する障害者の利便の増進、障害者に対して情報を提供する施設の整備等が図られるよう必要な施策を講じなければならない。
2 電気通信及び放送の役務の提供を行う事業者は、社会連帯の理念に基づき、当該役務の提供に当たっては、障害者の利用の便宜を図るよう努めなけれぱならない。

(経済的負担の軽減)
第23条 国及び地方公共団体は、障害者及び障害者を扶養する者の経済的負担の軽減を図り、又は障害者の自立の促進を図るため、税制上の措置、公共的施設の利用料等の減免その他必要な施策を講じなけれぱならない。

(施策に対する配慮)
第24条 障害者の福祉に関する施策の策定及び実施に当たっては、障害者の父母その他障害者の養護に当たる者がその死後における障害者の生活について懸念することのないよう特に配慮がなされなければならない。

(文化的諸条件の整備等)
第25条 国及び地方公共団体は、障害者の文化的意欲を満たし、若しくは障害者に文化的意欲を起こさせ、又は障害者が自主的かつ積極的にレクリエーションの活動をし、若しくはスボーツを行うことができるようにするため、施設、設備その他の諸条件の整備、文化、スポーツ等に関する活動の助成その他必要な施策を講じなければならない。

(国民の理解)
第26条 国及び地方公共団体は、国民が障害者について正しい理解を深めるよう必要な施策を講じなければならない。

第3章 障害の予防に関する基本的施策

第26条の2 国及び地方公共団体は、障害の原因及び予防に関する調査研究を促進しなければならない。
2 国及び地方公共団体は、障害の予防のため、必要な知識の普及、母子保健等の保健対策の強化、障害の原因となる傷病の早期発見及び早期治療の推進その他必要な施策を講じなけれぱならない。

第4章 障害者施策推進協議会

(中央障害者施策推進協議会)
第27条 厚生省に、中央障害者施策推進協議会(以下「中央協議会」という。)を置く。
2 中央協議会は、次に掲げる事務をつかさどる。
 1 障害者基本計画に関し、第7条の2第4項に規定する事項を処理すること。
 2 障害者に関する基本的かつ総合的な施策の樹立について必要な事項を調査審議すること。
 3 障害者に関する施策の推進について必要な関係行政機関相互の連絡調整を要するものに関する基本的事項を調査審議すること。
3 中央協議会は、前項に規定する事項に関し、内閣総理大臣、厚生大臣又は関係各大臣に意見を述べることができる。

第28条 中央協議会は、委員20人以内で組織する。
2 中央協議会の委員は、関係行政機関の職員、学識経験のある者、障害者及び障害者の福祉に関する事業に従事する者のうちから、厚生大臣の申出により、内閣総理大臣が任命する。
3 中央協議会に、専門の事項を調査審議させるため、専門委員を置くことができる。
4 中央協議会の専門委員は、学識経験のある者、障害者及び障害者の福祉に関する事業に従事する者のうちから、厚生大臣の申出により、内閣総理大臣が任命する。
5 中央協議会の専門委員は、当該専門の事項に関する調査審議が終了したときは、解任されるものとする。
6 中央協議会の委員及び専門委員は、非常勤とする。

第29条 前2条に定めるもののほか、中央協議会に関し必要な事項は、政令で定める。

(地方障害者施策推進協議会)
第30条 都道府県(地方自治法第252条の19第1項の指定都市(以下「指定都市」という。)を含む。以下同じ。)に、地方障害者施策推進協議会を置く。
2 都道府県に置かれる地方障害者施策推進揚議会は、次に掲げる事務をつかさどる。
 1 当該都道府県における障害者に関する施策の総合的かつ計画的な推進について必要な事項を調査審議すること。土当該都道府県における障害者に関する施策の推進について必要な関係行政機関相互の連絡調整を要する事項を調査審議すること。
3 都道府県に置かれる地方障害者施策推進協議会の組織及び運営に関し必要な事項は、条例で定める。
4 市町村(指定都市を除く。)は、当該市町村における障害者に関する施策の総合的かつ計画的な推進について必要な事項及び障害者に関する施策の推進について必要な関係行政機関相互の連絡調整を要する事項を調査審議させるため、条例で定めるところにより、地方障害者施策推進協議会を置くことができる。

附則(抄)

(施行期日)
1 この法律は、公布の日から施行する。ただし、(中略)第7条の次に1条を加える改正規定、第4章の章名の改正規定、第27条の前の見出し並びに同条第1項及び第2項の改正規定、第28条第2項及び第4項の改正規定、第30条の改正規定並びに次項(中略)の規定は、公布の日から起算して6月を超えない範囲内において政令で定める日(平成6年6月1日−平成6年政135)から施行する。

(経過措置)
2 第7条の次に一条を加える改正規定の施行の際現に策定されている障害者のための施策に関する国の基本的な計画であって、障害者の福祉に関する施策及び障害の予防に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るためのものは、この法律による改正後の障害者基本法の規定により策定された障害者基本計画とみなす。

心身障害者対策基本法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(参議院厚生委員会)

政府は、次の事項について適切な措置を講ずべきである。
1 障害者の「完全参加と平等」の実現に向け、政府の「障害者対策に関する新長期計画」に基づき、障害者のための施策の一層の充実を図ること。
2 てんかん及び自閉症を有する者並びに難病に起因する身体又は精神上の障害を有する者であって長期にわたり生活上の支障があるものは、この法律の障害者の範囲に含まれるものであり、これらの者に対する施策をきめ細かく推進するよう努めること。
3 精神障害が法律の対象であることを明定したことにかんがみ、精神障害者のための施策がその他の障害者のための施策と均衡を欠くことのないよう、特に社会復帰及び福祉面の施策の推進に努めること。
4 事業者の責務を新たに定めたことにかんがみ、事業者がその責務を果たしやすいよう、必要な施策を推進すること。
5 中央障害者施策推進協議会に障害者及び障害者の福祉に関する事業に従事する者のうちからも委員及び専門委員を任命することと定めたことにかんがみ、地方障害者施策推進協議会においても、同様の趣旨が生かされるよう適切に指導すること。
右決議する。
(1993年11月16日)