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人権を考える


(1) 基本的人権
 人は誰でも「幸せに暮らしたい」という願いを持っています。この幸せに暮らしたいという願いを「基本的な権利」ととらえることができます。

 国民一人一人が人間として幸せに生活し、社会の一員として活動するために当然認められなければならない権利のことを「基本的人権」といいます。

 第二次世界大戦後、国際連合を中心に人権侵害や非人道的行為を防ぐため、人権の国際的な基準を設け、その遵守を国際的監視の基におこうとする努力がなされるようになりました。こうして示された基準が1948年(昭和23)の「世界人権宣言」です。世界人権宣言の第1条では、「すべての人間は、生まれながらにして自由であり、かつ尊厳と権利について平等である。人間は、理性と良心とを授けられており、互いに同胞の精神を持って行動しなければならない」とし、具体的には、「すべての人は、人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治上その他の意見、国民的もしくは社会的出身、財産、門地その他の地位またはこれに類するいかなる事由による差別を受けるこことなく、この宣言を掲げるすべての権利と自由を享有することができる」としています。

(2)「人権教育のための国連10年」
 国連は世界人権宣言の普及と人権文化確立のため、1994年(平成6)「人権教育のための国連10年」が決議され、1995年から行動にうつされました。この行動計画は、人権尊重を言い聞かせる「心がけ」や単なる知識を与える教育ではありません。それは、「生活を高め、未来を保証する」教育をめざしているのです。いいかえれば、「人間らしく生きたい」と願うあたりまえの心を大切にして、部落差別をはじめとする一切の差別をなくしていくための教育なのです。

 行動化のために、次の4つに具体化されています。

 @ 「人権をめざす教育」……人権をめあてにしていく教育(目的)
  ・ 部落差別をはじめ一切の差別をなくしていくための教育目標
 A 「人権としての教育」……教育を受けること(学校にいけること)
  ・ 教育の機会均等の保障
 B 「人権を通じての教育」……人権が守られる状態をつくりだす教育
  ・ 仲間づくり、地域と結びついた教育実践
   (人と人とのつながりのなかでコントロールしていく力を育てる)
 C 「人権についての教育」……人権を教える教育(知識理解)
  ・ それぞれの時代に生きた人々が、どのようなものの見方・考え方で生きてきたか。部落問題と私たち自身の関わりや社会のありように気づき、自らを問い直していく学習

以上の国連決議を受けて、人権教育のための国連10年に関する国内行動計画が示されました。
それは、いろいろな施策の着実な実施をとおして、人権教育の積極的な推進を図り、国際的視野にたって、一人一人の人権が尊重される、豊かでゆとりのある人権国家をめざしています。

(3)人権文化の創造
・ だれもが人間として尊重され、共に生きる喜びを実感できる社会をつくることです。
・ 自他の人権を尊重することがあたりまえの世の中をつくりだしていくことです。
・ 人権問題という本質から見直せば、同和問題は決して特別な問題では
 なく、基本的人権を保障された、すべての人々の生き方にかかわる普遍的な問題なのです。

(4) 日本国憲法の基本的人権
精神の自由 *思想・良心の自由(19条)
*信教の自由(23条) *学問の自由(23条)
*集会・結社・表現の自由(21条) 
@自由権 *奴隷的拘束・苦役からの自由(18条)
人身の自由 *法的手続きの保障(31条
*拘留拘禁に対する保障(34条)
*住居への不法進入禁止(35条)
*刑事被告人の権利保障(37条)
* 黙秘権の保障(38条)など
経済の自由 *居住・移転・職業選択の自由(22条)
*私有財産の保障(29条)
A平等権 *法の下の平等(14条)
*男女の本質的平等(24条)
*選挙権の平等(44条)
B社会権 *生存権(25条)
*教育を受ける権利(26条)
*勤労権(27条)
*団結権・団体交渉権・団体行動権(28条)

1.差別意識を伝えない
 私たちは、生まれ、家柄、学歴、職業などで人を評価するような因習的差別意識をなくしていかなければなりません。

 また、差別意識を持たない子どもに対して、偏見を伝えないようにしなければなりません。

 今日では、因習的差別意識を持ったり、それに基づいて行動する人は徐々に少なくなっていると言えます。反面、他人のことには一切かかわりたくないという社会的無関心層も増えています。

 非合理的な部落差別を解消するには、「寝た子を起こすな」という消極的な考え方を廃し、部落差別の問題を正しく理解した上で、「自分たちの社会は自分たちでよくしていく」という積極的な気持ちと行動が重要です。
 そのためには、お互いが助け合い、次の世代には差別意識を伝えないようにしていかなければなりません。 
 例えば、日常生活のなかで生まれる「うわさ話」や「ないしょ話」には悪意やねたみ心が根底にある場合があり、ものごとの真実をおおい隠してしまうことがよく見受けられます。

 それは、ともすれば話し手の独断や偏見に基づくものが多く、伝わっていく過程で尾ひれがつき、事実を著しく曲げたものになりかねません。こういうことが、あらゆる差別を残し、差別を温存することにつながってい
 くのです。

2.よりよい人間関係づくり
 その人の「人権意識」は、家庭だけでなく、学校、職場、地域社会など身近な人々の考え方からも多くの影響を受けて培われていきます。

 「人権」を正しく理解し、人権を尊重する行動の輪を広げていくためには、まず差別や偏見を持っている人の対して、お互いが自由に助言しあえるような、そんな人間関係を築くことが大切です。このためには、日頃からお互いに深く理解し合える関係を培っていくことが大切です。

 部落差別が現在まで残っている大きな原因としては、対象地域内外の人たちの交流が閉ざされたことが挙げられます。これを解消するためには、対象地域内外の交流を活発に行い、あらゆる機会をとらえて幅の広い交流活動を続けていくための人間関係づくりをすることが大切です。

3.生涯学び続けることの大切さ
 今は人生80年時代となり、一生学び続ける生涯学習の時代といわれています。各地の市民会館、公民館、集会所などでは住民を対象としたさまざまな講座や学習の場が設けられています。また、サークル活動も活発におこなわれ、参加も増加しています。

 ただ、これらに参加する目的が個人の知識、技能を高めるだけでなく、学ぶことが自分自身の人間的な向上をめざすものであり、「生きる力」にかかわるものであることを自覚する必要があります。

 そのためには、人権問題を基盤として学ぶことを通して、人と人とのふれあいを大切にし、人権意識を高めていくことが必要です。さらに、人権問題については、正しい理解や認識だけでなく、それが日々の生活面の行動や実践に結びつかなければなりません。行動と実践により、一人一人の人権尊重となり、真の幸せな生き方につながるからです。

 私たちは、生涯学習を通して日常生活のなかの偏見や差別につながるようなことを見直していく必要があります。古き良きものは残しつつも、よりよい社会づくりのために、常に努力していかなければならないわけです。

4.人権教育の新しい方向
 国連では、人権教育を「知識と行動力を分かち与え、態度を育むことを通じて、人権の普遍的な文化を形成しようとする教育、訓練、情報提供の取り組み」と定義づけています。

 人権の擁護・推進のためには、そもそも人権とは何かということを一人一人が理解し、人権尊重の意識を高めることが重要になってきます。そして、人権教育は国際社会が協力して進めるべき基本的な課題なのです。